『13日の金曜日』のデレク・ミアーズが奇跡の出演

――宿敵の鬼死魁星役が、『13日の金曜日』(2009年)でジェイソン役だったデレク・ミアーズさんだったりして、かなり豪華なキャスティングだと思いました。
光武:デレクが今回出てくれたのが本当に奇跡でした。幸いなことに僕と彼は友達関係を築いていました。しかも、彼はジャパニーズアニメオタクで、永井先生の名前も知っていたんですね。そんな彼が「次回作は何をやるの?」と聞いてきて、僕が「永井豪先生原作で」と話したら、彼が「マジで? 脚本ができたら読ませて」と言うんですよ。
僕は彼に出てもらいたいけれど、絶対に出てもらえません。彼のギャラの範囲が我々の作品規模を超えていますから。でも、ダメ元というか、出てもらうことは期待せず「感想だけもらえればいいかな」と思って脚本を読んでもらったら、彼の方から「鬼死魁星役をやりたい」という話になったんですよ。僕が「マジで? お金ないよ」と言ったら、彼が「わかった。俺がエージェントに『アメリカ俳優協会のミニマムのギャラでやる』と言うから、それでいい」と引き受けてくれました。彼の友情出演というか、男気出演というか、非常に感謝しています。
――鬼死魁星は非情なキャラクターですけれども、それを演じたデレクさんは本当に素晴らしい方なんですね。
光武:そうなんですよ。ハリウッドのインタビューでよく「彼は素晴らしい人間で」とか「彼は人格者で」とか言いますよね? あれは大体嘘です。そんなに人格者だらけの業界のわけないですからね。でも、デレクは本当に人格者で、「やる」と言ったことをやってくれました。
鬼死魁星の手下役を演じてくれたデヴィッド・サクライは、僕の過去作『KARATE KILL』(2016年)にも出てくれた日系デンマーク人の俳優です。メジャー作品に出たり、ジョニー・デップと共演したりしています。彼はデンマークで『サムライ・アベンジャー』(2009年)を観て、Facebookを通して僕と友達になってくれて、それ以来ずっと仲良しなんですよ。数年前にロサンゼルスに引っ越してきた彼とは、実際に会って飲みに行くようになりました。
今回の映画でチャンバラの見せ所はデヴィッド対デレクです。ハリウッドの場合、リハーサルにもギャラが発生するんですよ。だから、僕の映画ではそんなに練習させられなくて「どうしよう?」と悩んでいたら、デヴィッドとデレクが自主練ということにしてくれました。プロダクションに請求書を出さない形で、「好き勝手に集まって自主練しています」という体でずっと練習してくれたので、あれだけ激しいチャンバラシーンが撮れました。
――もともとお二人は殺陣ができたわけではないんですね。
光武:二人ともチャンバラが好きですけど、全然上手いわけではありません。スタンドコーディネーターが非常に良い殺陣を付けてくれて、それを二人が時間をかけて、すごく一生懸命練習してくれました。キャストには本当に感謝の念しかないですね。