今回は、「世界最高峰のモータースポーツ」のひとつであるF1について、そもそもF1とは? から70年以上の長い歴史の中で圧倒的に速くて強さを発揮したチームやドライバーのご紹介、そして、2023年に歴史的勝利をあげてダブルタイトルを獲得したレッドブル(オラクル・レッドブル・レーシング)とそのチームをパワーユニットで支えてきた日本のホンダレーシング(HRC)、さらにホンダがエンジンを供給して伝説的勝利をおさめた1988年マクラーレン(マールボロ・マクラーレン・ホンダ)との比較なども交えて、これまでにF1で数々の栄光をつかみとってきたホンダで受け継がれる「ホンダのF1フィロソフィー」、F1に関わる人々がいつの時代も常に競争して切磋琢磨しているからこそ魅力的であることを中心にコラムをお届けします。

F1について

そもそもF1とは国際自動車連盟[the Fédération Internationale de l’Automobile(FIA)]のモータースポーツカテゴリーであるフォーミュラワン世界選手権[Formula One World Championship]の略称でグランプリ[Grand Prix(GP)=フランス語で大賞という意味]と合わせてエフワングランプリ[F1 Grand Prix]と開催される各国の名称と共に称され、例えば「F1日本GP」といった具合に表現されています。
わかりやすく言うとドライバー、チーム、マシン、サーキット、規模といった全てが「世界最高峰のモータースポーツ」です。

F1は1年間のシーズンにおいて各GPのレースで「チャンピオンシップ・ポイント」が順位などに応じて付与される形で行われ、ドライバーの「ドライバーズ・ワールド・チャンピオン(ドライバーズタイトル)」とチームの「コンストラクターズ・ワールド・チャンピオン(コンストラクターズタイトル)」が競われます。
ちなみに元来、コンストラクターとは製造者を指していて、車体製造者とエンジン製造者が別の場合は車体製造者を指しますが、現在は製造委託者も含めチームを指しています。

F1が初開催されたのは1950年のイギリスGPで既に70年以上の歴史があり、かつては有名なアメリカの「インディ500」もF1に組み込まれていました。
そんな中、1950年の第2戦モナコGPから現在に至るまでフェラーリはチームとして唯一、継続してレースに参戦していて「F1の歴史はフェラーリの歴史」とさえ言われる所以はここにあります。

F1において圧倒的速さと強さを誇った伝説の数々

F1においては、これまで数々の名勝負が繰り広げられてきましたが、伝説として語り継がれるほどに圧倒的に速くて強いドライバーやチーム、マシンが存在しており、今回はその中のいくつかをご紹介します。

先ずは、F1が始まった年である1950年のアルファロメオです。
当時は年間全7戦で内1戦はアメリカが誇るレース「インディ500」が組み込まれていましたが、アルファロメオは出走しなかった「インディ500」を除いた6戦を全勝、当時はまだコンストラクターズタイトルが存在していませんでしたが(コンストラクターズタイトルは1958年から)、年間3勝を挙げた「ジュゼッペ・ファリーナ」選手がF1初のドライバーズタイトルを獲得しています。

「最強F1チームを支えるホンダのF1フィロソフィー」【自動車業界の研究】
(画像=1950年F1初開催イギリスGPでアルファロメオ158に乗りチェッカーフラッグを受ける「ジュゼッペ・ファリーナ」選手(Alfa Romeo)、『CARSMEET WEB』より引用)

その後、1950年代にアルファロメオ、メルセデス・ベンツ、フェラーリ、マセラティにて、5度のドライバーズタイトルを獲得した伝説のドライバー「ファン・マヌエル・ファンジオ」選手は2003年に「ミハエル・シューマッハ」選手に記録が破られるまでの実に50年にもわたってドライバーズタイトル獲得回数の最多記録でした。

「最強F1チームを支えるホンダのF1フィロソフィー」【自動車業界の研究】
(画像=1954年メルセデス・ベンツW196に乗る「ファン・マヌエル・ファンジオ」選手(Wikipedia)、『CARSMEET WEB』より引用)

次に、1969年の「フォード・コスワース・DFVエンジン(Ford cosworth DFV engine )」はマトラ(MATRA)、ロータス(LOTUS)、ブラバム(BRABHAM)、マクラーレン(MCLAREN)の4チームに供給、搭載されて年間の全11戦を全勝(マトラが6勝、ロータスとブラバムが各2勝、マクラーレンが1勝)していて、マトラの「ジャッキー・スチュワート」選手がドライバーズタイトルを獲得しています。
V型8気筒、排気量3.0Lリッター自然吸気の「フォード・コスワース・DFVエンジン」は実に1968年から1974年まで7年連続でチャンピオンエンジンとして君臨していて、1969年の全勝はその強さを象徴するシーズンであったと思われます。

「最強F1チームを支えるホンダのF1フィロソフィー」【自動車業界の研究】
(画像=1969年マトラ・フォードMS80に乗る「ジャッキー・スチュワート」選手(Wikipedia)、『CARSMEET WEB』より引用)

続いて、日本の企業として初めて1986年にチャンピオンエンジンとなった「ホンダエンジン」は圧倒的パワーと信頼性、デジタル技術でF1をリード、ウィリアムズ・ホンダ(1986年、1987年)とマクラーレン・ホンダ(1988年、1989年、1990年、1991年)で6年連続コンストラクターズタイトルを獲得してチャンピオンエンジンとして君臨しました。

1987年のイギリスGPでは1位から4位を独占という快挙も成し遂げており、1位はウィリアムズ・ホンダの「ナイジェル・マンセル」選手、2位は同じくウィリアムズ・ホンダの「ネルソン・ピケ」選手、3位はロータス・ホンダの「アイルトン・セナ」選手、4位は同じくロータス・ホンダで日本人F1ドライバーの先駆者である「中嶋 悟」選手で、さらにウィリアムズ・ホンダの2台は他の全てのチームを周回遅れにするほどの圧倒的速さでした。

「ホンダエンジン」は他のエンジンに比較して燃費が良くて、過給圧規制がなかった時代には瞬間的に最高出力1500馬力とも言われたV型6気筒、排気量1.5Lターボの時代に最強エンジンの称号をほしいままにしていて、その後、過給がレギュレーションで禁止された1989年以降もV型10気筒やV型12気筒の排気量3.5L自然吸気エンジンで参戦を続けた1992年まで最強エンジンとして君臨し続けました。
しかし、1992年は車体や空力といったマシンの総合性能で上回るウィリアムズ・ルノーにコンストラクターズタイトルもドライバーズタイトル(「ナイジェル・マンセル」選手)も奪われ、エンジンで勝てる時代の終焉とも言われましたが、逆にそれほどまでに「ホンダエンジン」が強かったとも言えるのではないでしょうか。
その後も日本企業でエンジンやパワーユニット(ハイブリッド)をF1チームに供給してチャンピオンを獲得した企業はホンダ以外に存在していません。

「最強F1チームを支えるホンダのF1フィロソフィー」【自動車業界の研究】
(画像=「ホンダエンジン」1-2-3-4フィニッシュ〔1987年イギリスGP〕、『CARSMEET WEB』より引用)

日本企業として他には、タイヤを供給するブリヂストンが1998年に(マクラーレン・メルセデスでコンストラクターズと「ミカ・ハッキネン」選手のドライバーズのダブルタイトルを獲得、後にフランスのタイヤメーカーであるミシュランとタイヤ戦争とも称されるほどの名勝負を重ねて、参戦を続けた2010年までに通算175勝しています。

そして、世界最高峰のレースとして名高いモナコGPにおいて、1984年から1993年までの10年にもわたって「アイルトン・セナ」選手(6勝)と「アラン・プロスト」選手(4勝)がライバル2人で全勝(10勝)しています。
10年という年月はとても長くて、日進月歩があたり前のF1の世界において、ドライバーにとって最も難易度の高い究極のレースとさえ言われるモナコGPにおいて、如何に2人が速くて強かったかを伺える極めて偉大で尊敬される戦績であると思います。

「最強F1チームを支えるホンダのF1フィロソフィー」【自動車業界の研究】
(画像=1991年モナコGPでマクラーレン・ホンダMP4-6に乗る「アイルトン・セナ」選手(Wikipedia)、『CARSMEET WEB』より引用)

近年では、メルセデス[メルセデス・AMG・ペトロナス(Mercedes-AMG PETRONAS)]がコンストラクターズタイトル連続獲得の史上最多記録として2014年から2021年まで何と8年連続を成し遂げています。
8年にもわたってチャンピオンになるためのアドバンテージを保つことがどれほど難しいか? は想像を絶する世界ですが、チーム力の源である「人」はドライバーやメカニック、エンジニア、スタッフなどの移籍も多いF1の世界において、「トト・ウォルフ」代表やメルセデスのチームとしての求心力、ガソリン自動車を発明した「メルセデス・ベンツ」としてのブランド力などがあってこその偉業ではないでしょうか。
また、マシンへのレギュレーションの関係から2020年メルセデス「W11」は2023年時点においても歴代最速と言われ、F1が開催されるサーキットのコースレコードも保有しています。

そして、歴代F1ドライバーとして最多7度のドライバーズタイトルを獲得している「ミハエル・シューマッハ」選手と「ルイス・ハミルトン」選手、それぞれがフェラーリとメルセデスの黄金期とも重なっていて、とてつもない記録です。
さらに「ルイス・ハミルトン」選手は2024年も現役ドライバーとしてメルセデスからの出走が予定されていますので、さらなるドライバーズタイトル獲得も期待されます。

他にもたくさんの伝説とされる凄まじいF1の戦績があるかとは思いますが、今回はその中からいくつかをご紹介しました。

「最強F1チームを支えるホンダのF1フィロソフィー」【自動車業界の研究】
(画像=2002年フェラーリ F2002 に乗る「ミハエル・シューマッハ」選手(Ferrari)、『CARSMEET WEB』より引用)
「最強F1チームを支えるホンダのF1フィロソフィー」【自動車業界の研究】
(画像=2020年メルセデス W11 に乗る「ルイス・ハミルトン」選手(Mercedes-Benz)、『CARSMEET WEB』より引用)