脚本家は原作者と日テレの取り決めを知らされていたのか

 日本テレビは芦原さんの訃報に際し、29日のニュース番組内で

<2023年10月期の日曜ドラマ『セクシー田中さん』につきまして日本テレビは映像化の提案に際し、原作代理人である小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております。本作品の制作にご尽力いただいた芦原さんには感謝しております>

とするコメントを発表しているが、テレビ局関係者はいう。

「原作者の漫画家や小説家が、どこまでドラマの内容にまでタッチするかは人によってまったく違う。『ドラマは原作とは別物』というスタンスで、クレジットに原作として表記されていても、まったく口を出さない原作者もいる。今回の『セクシー田中さん』の件でいえば、企画の段階で原作者からここまで厳格な条件を提示されたのであれば、ドラマ化を進めること自体に無理があったと感じる。制作サイドのほうで『とにかく人気漫画を原作とするドラマをつくらなければならない』ということが最優先されたのではないか。今のテレビ制作現場の現状を踏まえれば、そのような事態が起きるというのは容易に想像がつく。

 また、脚本家のインスタのポストを読む限り、制作サイドと原作者の間で交わされていた『漫画に忠実に』という取り決めについて、脚本家が知らされていなかった可能性がある。もしこの取り決めを事前に知らされた上で仕事を引き受けていたのであれば、それに従っていただろうし、条件をのめないということなら、仕事を引き受けていなかっただろう。

 脚本やプロットの制作にあたり原作者と脚本家が直接やりとりをするケースはごく稀にあるが、通常はテレビ局のプロデューサーなどを介してのやりとりになる。今回は原作者と脚本家の間に小学館と日本テレビが2重に介しており、正確な意思疎通が十分にできなかったことも考えられる。

 今回は原作者と脚本家がともに人気漫画家、人気脚本家ということもあり、スポンサー的な事情や話題づくりという面から、制作サイドとしてはこの2つの要素はどうしても堅持しておきたかったのだろう。その結果、さまざまな無理が重なってトラブルに発展したのでは」

 別のテレビ局関係者はいう。

「人気脚本家であっても、テレビ局側の意向に逆らうのは難しいのが現状で、プロデューサーからの指示を受けて、プロットそのものを変えたり、何度も脚本を修正するというケースは珍しくない。今回、もし脚本家が制作サイドと原作者の間での当初の取り決めを知らされていなかったのだとすれば、理由もよくわからず何度も書き直しを指示され、そのストレスと労力は相当な大きさであったと想像に難くない。今回の問題は今後の日本のドラマ界全体に大きな影響をおよぼすものであり、日本テレビには徹底した検証とその結果の公開が求められる」

 今回の問題が起きた背景について、かつて日本テレビで解説委員やドキュメンタリー番組のディレクターを務め、放送局の現場に詳しいジャーナストで上智大学教授の水島宏明氏に解説してもらう。