アバターを活用することで、これまで直接店舗に来ることのできなかった遠隔地に住む人たちや身体障害者、高齢者などが、自宅からでもアバターのオペレーターとして仕事ができるようになったという。実際に勤務しているアバターオペレーターのなかには、自閉症で直接人前に立つのが苦手だけれども、アバターを通してならお客と話をすることはできるという人もいた。単に人手不足解消だけでなく、引きこもりで家から出られなくなった若者などが社会復帰するきっかけにもなるのではないかと、その期待は大きい。
ローソンでアバターを店舗に導入しようという話が出たのは2022年4月頃から。その後、大阪大学発のベンチャー「AVITA」と協力し22年9月の記者会見で発表している。実はこのアバターオペレーターの採用、10~60代の幅広い年齢層を対象に30人募集したところ400人が集まったという。社会の関心度も大きい。当面は30人がグリーンローソンで働き、その後、23年度中には東京・大阪の10店舗で働くアバターオペレーターを50人育成。25年までには1000人を採用する予定だという。
「将来的には人手が不足している深夜の時間帯などで複数店を見てもらうような仕組みも考えていきたいと思っています」(ローソン広報担当者)
実際にアバターオペレーターに話を聞いてみると、新しい働き方に満足しているようだ。
「パソコンなど機械類は得意だったのですが、発達障害を抱えている。そのため対面での接客には抵抗があったのですが、自宅でやり取りできますし、アバターだったら対面しているわけではないので、自分としてはやりやすいと感じました」(40代、大阪在住、男性)
「コンビニで働いた経験はなかったのですが、お昼や夕方にはたくさんお客さまが来られてサポートすることは多いです。ただ、私がしゃべるということを認識していない方も多いので、手を振るなどしてアピールしています。手の空いている時なんかに子供から『じゃんけんしよう』なんて言われることがよくあるんです」(前出の女性)
「私は大崎にあるローソンの本社から参加しているのですが、最初はAIかロボットのようなものだと思われて、なかなか声をかけてもらえませんでした。手を振ったり実際に会話するようになると人間が対応しているのだとわかり、関心を持ってくれる人が増えました。最近では子どもが『今日はそらとか。あおいじゃないのかよ。はずれだ』なんていいながらアバターに会うことを楽しみにしているようです(笑)。店内ではできないようなコミュニケーションを取ることができるのが魅力です」(30代前半、東京都、男性)
バックヤードではアバター同士がチャットで情報交換することができるようになっており、仕事でわからないことがあったときや新しい商品の情報交換などをすることができるという。
「グリーンローソン」はオープンしてすでに2カ月以上がたつが、その成果はどうか。
「売上はナチュラルローソンの頃とそれほど変わってはいませんが、売上構成は大きく変わりました。以前はタバコなどの売上が多かったのですが、今回は免許証の提示などが必要なのでちょっと影響を受けています。一方で厨房系は強化しているので、売上に大きく貢献しています。店内調理はたばこに比べて利益率が3倍くらい違います。以前のような食品ロスもほとんどありませんから、利益率は伸びています」(ローソン広報担当者)
「グリーンローソン」で検証された新しい取り組みは今後、効果が実証され次第、各店舗で採用されていくことになる。
(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)
提供元・Business Journal
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