海外の中学へ進学させる層とその理由
海外の中学進学を目指す人はどのような人たちなのか? そこにはどんな理由があるのだろうか?
当然授業料と寮費は高額になる。日本の中学受験の非ではない。イギリスの平均的なパブリックスクールで年間500万円前後と、日本の大学4年間の授業料に匹敵する額だ。当然その金額を支払える経済力の持ち主が自身の子供達を進学させる訳だが、主な理由は以下の2つだと言える。
最も大きな理由は、日本や日本の教育に対する不安だ。ともすると諦めとも言える。これまで燻っていたものがコロナにより一気に露呈した。
コロナによりオフラインの教育が制限され、そこで露わになったのが日本や日本の教育におけるテクノロジー化の遅れだ。ソフトはもちろんのこと、ハード面で端末それ自体やwi-fi環境などが整備されておらず、オンラインでの在宅学習にほぼ対応できなかった。これは昨今のお受験や私立中学入試ブームで公立から私立へと流れているのと同じ文脈と言える。
また、これほどのグローバル社会にもかかわらず、英語教育が一向に進まないのも理由の一つだ。一昨年からの学習指導要領の改訂で、小学5年生から週2回の英語の授業が教科化された。それでも45分を週2回だ。量的な不足の上に、学習環境も拍車をかける。先生1人に35人から40人の児童、生徒への一斉授業では個々の英語力を高めるには限界がある。全くの初心者から英検2級を取得する子まで幅広い層への対応は難しい。
慶応・開成に合格しながら実力は海外のボーディングスクールでつける戦略そして富裕層が最も危惧する日本の教育が、同一内容・同一進度で行われる暗記型の教育だ。現代はAIやロボット技術、NFTアートやメタバースが目覚ましい発展を遂げる時代。そうした世界で生き残るためには人間にしか出来ない資質や能力を身に付けなければならない。しかし、日本の教育は未だ大量生産時代の人材育成制度でバージョンアップされていない。
欧米先進国では、自身が興味を持った事象を深く掘り下げる探究学習や、社会課題などのプロジェクトを設定し、その解決策を考えて実践する学習スタイルのProject Based Learning(PBL)が主流になっている。0から1を創造する能力や課題を解決する能力の育成、失敗を恐れずチャレンジするオープンマインドセットの育成に教育のテーマが移っているのだ。
この差が日本と欧米の経済格差を生んだと言っても過言では無い。お行儀よく机に座り、先生の板書した内容をノートに取ってテストをする形の教育は、これからの時代では通用しないことを、富裕層の保護者はよく理解している。それは日本の名門私立中高に対しても同じだ。
海外系の名門ボーディングスクールに子供を進学させる親の多くは、経営者や夫婦で外資系の企業に勤めるパワーカップルだ。芸能人や国会議員、誰もが名前を知っている有名企業経営者のご子息もいる。
彼らは既に日本経済の低迷や日本の教育の遅れに気付いていて、これからの時代は世界視点で世界を舞台に仕事をする様になり、一生日本にいて、日本人とだけ生活をする事はないことをよく理解している。ガラパゴス化している日本に子供を閉じ込めておく事の危機感を強く持っている層だと言える。
慶応や開成に合格しながら通って来る子もいる。学歴は日本で、実力は海外のボーディングスクールでと言う考えだ。日本国内の価値は入学段階の偏差値で決まる。実力は海外の学校で身に付けると言う戦略だ。