心動かすものを作ろうという熱意


リポーターとして活躍する西脇さん

ーーメディア業界は予想通り刺激的な世界でしたか?

西脇:『ニュースステーション』には「(番組を)作る人」が伝えたいことが明確にあって、それを共有しながら自由にやらせてもらう空気や、ひとりでも多くの方の心を動かすようなものを「作ろう」という熱意に満ちていました。僕なんかは全力疾走のつもりが、コケて怒られることばかりでしたけど……(笑)。

ーーアナウンサーというと、番組でニュースを読むことが仕事だというイメージですが……

西脇:日によってさまざまな事件が起きて、取材やレポートをするために現場に向かい、当事者の話を聞くことも仕事です。

たとえば、当日の昼間にその日取り上げるニュースがラインアップされます。そこから構成などが決まるんですが、アナウンサーも一緒に夜までに取材や調査をしてコンテンツを作ります。

取材では短い時間でお話を聞くだけなので、すべてがわかることはありません。でも「かけら」かもしれないけれども、なにかを自分の手でつかめる。そのつかんだものを正確に、かつわかりやすくお伝えすることにやりがいを感じていました。

ーーアナウンサーとして、法律の知識が役立ったことはありますか?

西脇:公式発表の堅い表現や、法律用語をそのまま使わずにかみ砕いて説明したほうが伝わりやすいんじゃないかな?っていうときに知識が役立ちました。

それから、ニュースになるような出来事について、その起点となるような法律だったり制度だったりがわかることですね。

自作原稿ばかりを読むアナウンサーは変わり種?

ーー制作チームのひとりとして、知識をシェアしたりして番組の質を高めようとされていたんですね。

西脇:そうですね。僕のアナウンサー時代はちょっと不思議なんですよ。実は、ほかの人が書いた原稿を読んだことはあまりありませんでした。『ニュースステーション』のリポートや中継の多くは、自分の原稿は自分で書いて、上の人にチェックをしてもらいました。

そのあとに移った番組は『やじうまワイド』(テレビ朝日系で1987年9月から放送)。新聞をボードに貼って紹介するコーナーを担当したんですけど、あれも自分が選んだ新聞記事を自分で読んでいたんですよ。

ーーあの番組はアナウンサーがニュースをクリッピングしていたんですか!

西脇:もうひとりの担当とアナウンサーが一緒に記事を選んで、紹介する順番や構成を決めます。朝3時くらいにその日の朝刊が運び込まれて、番組は6時スタートでした。

ーー3大紙(朝日新聞・読売新聞・毎日新聞)以外も紹介されていましたよね……?

西脇:はい。日経新聞、産経新聞、東京新聞、それからスポーツ紙。さらに前日の夕刊紙も全部読みます。ほかのコーナーと記事がかぶっちゃいけないので、チームで作業します。

コーナーごとに分けたあと、誰かに原稿を書いてもらう時間はありません。だから自分で原稿を書きます。

ーー時間もタイトで、報道記者としての側面が強い仕事ですね。

西脇:さらに、ディレクター性が求められました。「視聴者にどう伝えるか」という意識が必要で、演出に近いことも考えました。ロジカルに考える・説明するという法律家に求められるスキルが「役立ったなあ」と思っています。