受信料の是非に触れない新聞と民放
NHKの存在意義を語るとき、必ず例示されるのが災害情報や防災情報だが、自然災害大国の日本では一理あるのかもしれない。「テレビを見ない若者にも命に関わる重要情報をネットで届ける」という理屈だ。しかし、NHKはすでにドラマやバラエティなど大量の娯楽系番組を朝から晩まで放送しており、そうした番組まですべてネットで配信するのは必須業務化の理由にはならない。
そして何より、ネット配信を必須業務にして、従来の放送が補完業務化していくならば、受信料の必要性についても議論すべきだ。放送には膨大な設備投資が必要だが、インターネットを使って配信するコストは格段に低い。受信料の是非について議論しないのは、NHKと新聞・民放の間での闇取引のようなものだと、有馬教授は話す。
「受信料の契約義務というのは法律で定められているが、あくまで放送に関するもの。ネット回線の光ファイバー回線は、敷設するための費用の8割は国民の税金負担による。だから楽天とかソフトバンクがもっと開放すべきだと言っている。新聞や民放は受信料がNHKの弱みであると知りながら、そこにはわざわざ触れず、その代わりネットのコンテンツに映像に限定しろと制限をつける。受信料は国民にとって最大の関心事でも、新聞や民放の経営には関係ないからだ」