松屋が出遅れた理由は、出店立地の差

 ここで改めて各社の第1四半期の決算を振り返ってみたい。ゼンショーHD(「グローバルすき家」部門)は売上高が616億7100万円(前年同期比 24.5%増)、営業利益が37億900万円(同2396.3%増)と好調が際立った。吉野家HD(「吉野家」部門)は売上高が296億6600万円(同 6.9%増)、営業利益が15億7300万円(同 6.0%増)と、すき家には及ばないものの前年より回復傾向に。松屋フーズHDは売上高が281億円(同12.6%増)と増加したものの営業損益は3800万円の赤字だった。

 この結果を受けて、松屋のみを「負け組」とする評価も見られた。前年同期が2億6800万円の赤字だったことを考えると回復傾向といえるが、大幅増益となったすき家に比べるとその差が明白なようにも見える。松屋が出遅れた理由は、出店している立地の差が大きかったという。

「牛丼業態は、松屋を含めて主に男性客をターゲットとしており、オフィス街や繁華街を中心に店舗を展開しています。しかし、このような立地条件は、近隣に住んでいる人の数が少ないため、コロナウイルスの影響で在宅勤務に移行したことにより、客数が減少することは避けられませんでした。松屋は20年度に客数が大幅減少し、リカバリーに時間がかかりましたが、出社率の向上とともに客数が戻ってきた結果、売上・営業利益も回復していきました。

 すき家の場合、ファミリー層をターゲットとして、郊外のロードサイド店舗の展開にも注力していました。店舗の周辺にはマンションや一軒家などの住宅があり、生活範囲内で通えるため、コロナ禍の巣ごもり需要にも対応することができました。そのため、他社よりもコロナ禍の影響を受けずに済んだのです」

 公益財団法人日本生産性本部が23年8月に発表した調査によると、テレワーク実施率は15.5%とコロナ禍以降で最低になった。20年5月の調査の31.5%に比べると、およそ半分の水準となる。やはりデータを見ても、出社率の向上と営業利益の回復には大きな相関関係がありそうだ。