『いかレスラー』『ヅラ刑事』『日本以外全部沈没』『ギララの逆襲』『地球防衛未亡人』『遊星王子 2021』『超伝合体ゴッドヒコザ』などを世に送り出してきた“バカ映画の巨匠”河崎実監督の代表作が『電エースカオス』となって復活!
本作は、2024年に35周年を迎える『電エース』シリーズから、選りすぐりのを映像を再編集して新作をつなげた劇場用映画だ。キックボクシング元世界チャンピオンの小林さとしと、昭和歌謡の専門家でムード歌謡歌手のタブレット純のダブル主演! 完全にどうかしている常識を超えたヒーローが、地球に襲来する怪獣や宇宙人と、ゆるく、くだらない戦いをスクリーンで繰り広げる。
今回TOCANAでは、映画の公開に先駆けて河崎監督にインタビューを行った。『電エース』の誕生秘話や撮影裏話なども交えながら、“バカ映画の巨匠”に映画や特撮への愛を熱く語ってもらった。

旧作の再編集も実はパロディーだった
――『電エースカオス』では、旧作の再編集に新作をつなげています。これは、『電エース』を初めて観る人への配慮なのでしょうか?
河崎実(以下「河崎」):これはパロディーなんですよ。『実相寺昭雄監督作品ウルトラマン』という映画があります。テレビで放送された『ウルトラマン』の話を5本つなげて、映画として公開した作品です。最初に名画座で上映したら超満員。だから、新宿ミラノ座に劇場を変更したんですが、それくらい当たったんですよ。テレビ番組を映画にしただけなのにね。
――なるほど『実相寺昭雄監督作品ウルトラマン』を意識したんですね。
河崎:テレビ番組を再編集した映画には他にも『ウルトラマン怪獣大決戦』『ウルトラマンZOFFY ウルトラの戦士VS大怪獣軍団』があって、これらも汲んでいます。再編集という手法は、オタクにはピンとくるんです。もちろん、『電エースカオス』は、一見さんが観に来てもいいようにはしているつもりだけどね。

――監督の過去作からはロバマンも出ていましたよね。ロバマンが怪獣イカラに向かってゴジラの思い出を一生懸命話している一方で、電五十二郎(タブレット純)が変身するために歌謡曲を歌っているシーンがとても印象的でした。
河崎:電五十二郎は歌謡曲をフルコーラス歌わないと電エースに変身できないからね。フルコーラス4分を2回入れて8分。
――監督は「映像を縮めることではなく、伸ばすことで苦労する」という話がありましたが、まさに8分も伸ばしたわけですね。
河崎:町山智浩さん(映画評論家)が「普通の監督は長いのを切るのに苦労するけれども、伸ばすのに苦労するのは河崎さんだけだよ」と言っていました。映画は尺が問題なんですよ。70分以上ないと映画館で上映してくれないから「少ない予算でどう伸ばすか?」を考えます。
――その伸ばすところに、たとえばタブレット純さんの歌が入っていて、それが映画として残っていくのですから、凄いやり方だと思います。
河崎:昭和の映画の社長シリーズや若大将シリーズは本編の20分くらい歌です。ミュージカルではない普通の映画の中で歌い出す。今はそういうのがないじゃないですか? だから、誰もやっていないことを俺がやって、みんなを困惑させるのが好きなんですよ。
――パロディーを散りばめつつもメッセージ性があって、絶妙なバランスだと思います。
河崎:確かにメッセージ性はあります。『電エースカオス』のテーマはSNSでのクソリプです。SNSでの誹謗中傷が原因で自ら命を絶った女子レスラーがいましたが、この事件をテレビではテーマにできないと思うんですよ。たとえば、ウルトラシリーズでめちゃくちゃなことを言えないじゃないですか? だから、『電エースカオス』ではあえてそれをやりました。
『電エースカオス』にも入っている『電エースキック』では、ハリウッドザコシショウさんが転売ヤーのハリウッド星人として登場します。当時はとても問題になっていた転売をテーマにしたんです。
『電エース』では、必ず悪の方からできています。悪がないと話が作れないじゃないですか? 昭和を消し去ろうとする宇宙人や、レコードに湿気を当てる宇宙人、レーザーディスクを叩き割る宇宙人もいます。俺のファンには、超合金の専門家とか昭和歌謡のコレクターとか、そういう人たちがいっぱいいるから、こうなっちゃうんですよ。
