『いかレスラー』『ヅラ刑事』『日本以外全部沈没』『ギララの逆襲』『地球防衛未亡人』『遊星王子 2021』『超伝合体ゴッドヒコザ』などを世に送り出してきた“バカ映画の巨匠”河崎実監督の代表作が『電エースカオス』となって復活!
本作は、2024年に35周年を迎える『電エース』シリーズから、選りすぐりのを映像を再編集して新作をつなげた劇場用映画だ。キックボクシング元世界チャンピオンの小林さとしと、昭和歌謡の専門家でムード歌謡歌手のタブレット純のダブル主演! 完全にどうかしている常識を超えたヒーローが、地球に襲来する怪獣や宇宙人と、ゆるく、くだらない戦いをスクリーンで繰り広げる。
今回TOCANAでは、映画の公開に先駆けて河崎監督にインタビューを行った。『電エース』の誕生秘話や撮影裏話なども交えながら、“バカ映画の巨匠”に映画や特撮への愛を熱く語ってもらった。

ウルトラマンに対抗する新規のヒーロー
――『電エース』を知らない読者への紹介も兼ねて、電エース誕生の経緯を教えてください。
河崎実(以下「河崎」):バンダイのビデオマガジンで『電影帝国』がありました。出渕裕や川村万梨阿が司会で、ガンダムの新作の予告編などが入っているものです。そこで、バンダイ編集長から「何でもいいから作ってくれ。予算30万円で」と言われて始まったんですね。当時は『ウルトラマン』がテレビで放送されていなかった空白期で、ウルトラマンを作りたかったんです。
――だから、電エースが「常識を超えたウルトラマン」なんですね
河崎:そう。『電影帝国』だから名前は「電エース」。30万円だけれど、2分くらいなのでとりあえず何とかできるんですよ。東京タワーのミニチュアを買ってきて、その横に人間が立つと、タワーが333メートルなので人間の身長が2000メートルになりました。そうすると、画面に東京タワーと怪獣とヒーローだけで済みます。「これはいける!」と思って、東京タワーを持って戦う設定にしました。
――東京タワーを怪獣の目にグサグサ刺すシーンが『電エースカオス』の最初の方にもありますよね。
河崎:電エースはダーティーなヒーローで、それをギャグでやったのが始まりなんですよね。ウルトラマンのパロディーだけれど、真剣に考えているところもあります。気持ちよくなったら変身するという部分です。
『帰ってきたウルトラマン』はピンチになったら変身するんですが、無理があったんですよね。ウルトラマンの都合で変身できないから。これに対して、電エースは、ビールを飲んだり女に抱き着いたりして、気持ち良くなると変身することにしました。人間は快楽を求めるために生きていますからね。
ちなみに、当時は缶ビールが自販機で売られていました。今はコンビニになって酒屋の前にも自販機がありません。だから、昔は缶ビールを自販機で買って変身できたけれど、今はコンビニに入らないと変身できないんですよね。

――ピンチの対比として快楽が出てきたんですね。
河崎:電エースは、最初からウルトラマンに対抗するように考えた、俺なりの新規のヒーローです。成田亨先生(初期ウルトラシリーズのヒーローや怪獣などをデザインした彫刻家兼特撮美術監督)が考えたように、ウルトラマンはコスモス(秩序)で、カオス(混沌)が正反対の怪獣なんですよ。『ウルトラマンコスモス』もあるくらいだから、「電エースはカオスだろ!」となりました。
電エースはウルトラマンと正反対の怪獣ですよ。だから、めちゃくちゃやっている。ウルトラセブンはアイスラッガーを投げるけれど、電エースは頭ごと投げる(「電シュート」という必殺技のこと)。そういう常識を超えたことを常に考えています。
尊敬する実相寺昭雄監督は変な映像を撮る人で、カルト的人気があったんですよ。「何だ、これは?」という、王道ではない『ウルトラマン』を撮っていました。そういうのに影響を受けているから、俺は普通でないことがいつも頭に浮かぶんです。
――電エースでは怪獣も頭が飛んだり手足がちぎれたりしていますが、今はテレビでそういうのを映せないですよね。
河崎:そうそう。今は怪獣をバラバラにするとか、真っ二つにするとか、ダメなんだよね。それも電エースではできるわけですよ。映画『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』では、ウルトラマンたちがゴモラ(古代怪獣)をめちゃくちゃにいたぶります。そういうのがいいじゃないですか? 子供の夢を壊します。