出艇するまでの機動力

よほど海の近くに住んでいない限り、駐車スペースから出艇場所までカヤックやSUPを運ばなければなりません。陸上でカヤック・SUPを運ぶ際の快適さ(=機動力)に大きく影響するのが「重さ」です。

カヤック&SUPフィッシングの機動力を徹底比較 良いとこどりの最新艇も紹介運搬には「重さ」が重要なファクター(提供:TSURINEWSライター福永正博)

カヤックの出艇は大変?

材質やモデルによってちがいはありますが、軽めのカヤックでも20kg前後、重量級のカヤックでは40kg以上のモデルもあります。

アスファルトで舗装されている平坦な道での移動はそれほどキツくは感じませんが、坂道やスロープ、フカフカの砂浜などでカヤックを引いて歩くときには負担を感じることもあるでしょう。

とはいえ、過度な心配は不要です。小柄で体力も平均レベルの筆者でも、大きなクーラーボックスなどの荷物を積むと合計50kg以上になるカヤックを砂浜で引っぱれています。適切なドーリーを使用し、なるべく平坦なルートを選べばヘトヘトに疲れてしまうほどではありませんよ。

SUPは出艇がラク!

カヤック乗りから見ると、SUPの軽さはとても魅力的です。率直に言って、出艇場所まで移動する際の機動力は、カヤックよりSUPの方が優れているといえます。

たいていのインフレータブルSUPは10kg前後。片手で持てるほど軽いので、出艇場所まで移動するときに、あまり体力を使わずに済みます。また、段差などがあっても担いで乗り越えることができるため、出艇場所の選択肢が増える点は大きなメリット。カヤックであればあきらめてしまう、階段を越えてのエントリーも可能です。ただし、ドーリーを使用せずSUPを担いで運ぶ場合、荷物の量によっては駐車場と出艇場所を往復しなければならないことがあります。空気を入れる時間がかかる点も考慮すると、準備してから出艇するまでの時間に関してはSUPがカヤックより早いとは限りません。

海上での機動力

海上での機動力に関しては、カヤックの優位性が際立ちます。

カヤック&SUPフィッシングの機動力を徹底比較 良いとこどりの最新艇も紹介海上での機動力は?(提供:TSURINEWSライター福永正博)

カヤックとSUPどちらが速い?

カヤックとSUPを乗りくらべたとき、もっともちがいを感じるのがスピードの差です。

SUPもトレーニングした人がボードの上に立ちあがり、全身の筋肉をうまく使って全力で漕げば、カヤックに負けないくらいのスピードを出すことは可能です。しかし、実際に釣りをするときは膝立ちか座ったままで漕ぐことがほとんど。カヤックが早歩きか小走りとすれば、SUPは普通に歩くスピードくらいのイメージです。

SUPフィッシングでもっとスピードを求めたいのであれば、シングルパドルでは推進力に限界があるため、カヤックで使用するダブルブレードに変更するのも有効な手段です。

カヤックとSUP どちらが流されやすい?

風に流されてはもとのポイントに戻り、また流されて……を繰り返していると、体力的にもメンタル的にも疲れてしまい、結果的に機動力の低下につながります。

カヤックやSUPは、広大な海の上では小さな木の葉のような存在。強い風が吹けば、あっという間に何十メートルも流されてしまいます。それをふまえて、あえて比較すればカヤックの方が風が吹いても流されにくいといえます。

SUPは、船体が軽く板状であるため、風の影響を非常に受けやすく、クルクルと向きが変わったり流されたりしやすい傾向。まさに木の葉のイメージです。

それに対して、カヤックはSUPよりも重く、水中に浸かっている部分が多いため、多少は風に対して耐性があります。

どちらにしても、強風下では非常に釣りがしづらく、なにより危険なので避けるようにしましょう。

カヤックとSUP どちらが走波性がある?

風が強かったり、波が高かったりという悪条件下では、波を乗り越えていく能力、すなわち「走波性」が機動力に大きく影響します。

カヤックとSUPの形状をくらべると、あきらかにカヤックの方が船首がとがっていて、波を切り裂いて進みそうな形をしています。

カヤック&SUPフィッシングの機動力を徹底比較 良いとこどりの最新艇も紹介船首の形状(提供:TSURINEWSライター福永正博)

それに対して、SUPの底面はフラットで、波を切り裂くのではなく、波を1つずつ乗り越えて進むイメージ。SUPは、海上での機動力においてカヤックに劣り、荒天時には苦労すると認識しておきましょう。やはり、海が荒れている状況では、走波性に優れているカヤックの方が安心感がありますね。

ちなみに、同じカヤックのなかでも手漕ぎと足漕ぎをくらべると、構造的に足漕ぎカヤックの方が一定して水をつかむことができるので、荒れた海での走波性が高いと考える人が多いようです。たしかに間違いではありませんが、乗り手がパドリングに熟練した人であれば、手漕ぎタイプの方が応用がきく場面もある一方、足漕ぎは後進ができて小回りがきくタイプもあるなど、どちらが優れているか一概には言えません。

くれぐれも足漕ぎカヤックだから安心だとか、自分はパドリングが上手いから大丈夫などと過信して、無理な釣行をすることがないように気をつけてください。