街との統一感がなければ人は離れる
また、長谷川氏は、住友不動産に街づくりができないという評価は誤りであるとする一方で、街との統一感については別問題として考えなければならないという。
「オフィス需要と街の魅力は相関しています。30〜40年前の丸の内は、オフィス街の一等地として人気でしたが、ビルの1階には銀行や証券会社ばかりの殺風景な印象で、六本木エリアの台頭により賑わいに陰りが見えていました。そのため、各ビルの1階や新築ビルの低層階にはおしゃれなカフェやレストラン等の商業店舗を誘致し魅力を創出することで、土日も一般客も訪れるような人気の街に変貌を遂げました。
秋葉原は、近年、秋葉原UDXの建設によりオフィス需要が増加しています。20〜30代のIT系企業の社長や社員のなかには、あえて秋葉原にオフィスを構えたいと思う人も多いようです。そのような人々に好まれる環境をエリア全体として整備しないと、結局はテナントも埋まりにくくなる。最近は、渋谷駅周辺や東京駅の八重洲口などの各エリアでビルの大規模開発が進み、各エリア間における競争が激化しています。結果、オフィスビルの空室率も上がっています。そうなってきますとお客さんを呼び込む上で、街全体の統一感を考慮せずに一方通行の従来的なビルを建設することには、自らも含めたエリア全体の利益にならないのも事実です」(長谷川氏)
大規模な再開発でない限り、建築基準法や各自治体の指導要綱に沿う形であれば、どのようなビルを建設するかはデベロッパーの判断に委ねられる。ただし、投資した資本の回収という面からみても、街との調和を考慮することは重要というわけだ。