2016年にKADOKAWAとドワンゴ(両社は2014年に経営統合)が開校した私立通信高校「N高等学校」と、21年に開校した私立通信高校「S高等学校」。両校を合わせた生徒数は、23年3月31日現在で2万4642名と日本一のマンモス校となっており、最先端のオンライン学習や豊富な課外活動が特徴的な学校となっている。
そんな両校の大学進学実績が好調と話題だ。22年度の進路実績では、卒業生7585人のうち33.24%が大学などに進学している。合格者数の内訳を見てみると、東京大学、京都大学を含む国公立大学が113名、早稲田大学、慶應義塾大学が94名、G-MARCH(学習院、明治、青山、立教、中央、法政)が268名、関関同立(関西、関西学院、同志社、立命館)が208名となった。しかも前年度比でそれぞれ151%、142%、175%、183%と順調に数字を伸ばしており、名だたる難関大学への合格実績は申し分ない。ひとりの生徒に対しメンターを複数人付ける複数メンター制の導入や、難関大学進学に向けた特別カリキュラムの実施などにより、大学合格者数を伸ばすことができているのだという。
そんな両校の強みを掘り下げて知るべく、今回は両校の進路指導戦略部の菅寿雄氏、放課後事業運営部の出口希氏に話を聞いた。
生徒の学習状況をスピーディに把握
はじめにN高とS高が設立された経緯について聞いてみよう。
「2014年に現N高校長の奥平博一を含む3名を中心として立ち上げられた、『高校設立プロジェクト』がきっかけでした。新しい学校を作りたいという3人の思いに共感したKADOKAWAとドワンゴが協力し、16年4月にN高が開校しました。N高では出版社・KADOKAWAが持つコンテンツと、動画プラットフォーム『ニコニコ動画』を運営するIT企業・ドワンゴが持つテクノロジーを活用し、新しい時代に新しい学びの場となる『ネットの学校』を目指しました。通信制高校の制度を利用し、最新のテクノロジーとネットを駆使した未来の学校を作ることを目的としていたんです。
その後21年4月には、定員が2万人になると予想されたためS高も開校しました。両校ともコース内容、カリキュラム、学費は同じですが、本校所在地がN高は沖縄県うるま市、S高は茨城県つくば市と異なっており、スクーリングの参加場所や日程も変わっております」(菅氏)
両校は主に下記の4つのコースに分かれている。
・好きな時間にネットで学習し、高校卒業資格取得に必要な必須授業が学べる「ネットコース」
・全国43カ所あるキャンパスのいずれかに通い、アクティブラーニングを対面で実施する「通学コース」
・ICTツールを活用し、少人数のグループワークをネット上で行う「オンライン通学コース」
・代々木、梅田キャンパスいずれかに通い、プログラミングに特化した学習をする「通学プログラミングコース」
なお、いずれのコースでも、オンライン学習や全国にあるスクーリング会場で行われるテストをこなせば、高校卒業資格が取得可能だ。両校の特徴でもあるオンライン学習だが、どのようにして生徒の学習状況を管理しているのだろうか。
「所属コースにかかわらず、ひとりの生徒に対しメンターと呼ばれるサポーターが複数人ついており、学習進捗確認や面談などをサポートしています。基本的に授業はビデオ学習で学ぶことになるのですが、メンター側は生徒がどれだけ授業を聞いているか、問題を解くスピードはどれくらいなのか、随時チェックして把握しています。
したがって、メンター側は生徒一人ひとりの進捗具合が事細かに確認できており、学習スケジュールをコントロールできているのです。私たちとしては、まず生徒の主体性を尊重していまして、生徒がどのように学びたいのか、どんなスケジュールを立てたいのかを確認し、最適な学習プログラムを組ませていただいています」(菅氏)