餃子の味は変えないが、ラーメンは進化させる

雪松の餃子は、前述したように野菜中心で、皮は薄皮なのも特徴だ。味についてはどんな声があるのか。

「餃子の味はお好みですから、肉餃子が好きな人には受けないかもしれません。当社に寄せられる声のなかには、たとえば『おいしいけど具の量を増やしてほしい』といったご意見もあります。ただ、具を増やすとあんとのバランスが崩れてしまいます。ご意見は拝聴しますが、3代目から引き継いだ味を預かっており、勝手に変える気にはなれません」(同)

一方の「冷凍ラーメン」は、“本物のラーメン”をミッションに商品開発をスタートさせた。生ラーメンでないのは、冷凍餃子の開発知見があったからだ。

「味の開発は、業務用・一般用を合わせて2500以上の製品を世に送り出した外部の専門家(複数)にご担当いただきました。当社が提示した条件は『お店で食べる本物のラーメンの味が、鍋1つで簡単につくれる』です。最初は『難しい』ムードが、すぐに『やってみよう』となり、優秀な技術者の尽力により短期間で美味しい味にすることができました。ただ、そこから目指した味への調整に試行錯誤を繰り返しました」(同)

味を「醤油」と「とんこつ」にしたのは、「店で食べるラーメンの顔」だからだという。販売後の売れゆきは前述した通りだが、新商品も開発した。

「イオンモール内に自販機を設置して、魚介だし醤油ラーメンと味噌ラーメンを3食1000円(同)で販売します。味噌味向けトッピングも3食1000円で用意しました」(同)

コロナ助成金も活用? 食品自販機が増えた理由

雪松の成功に刺激されたかのように、食品の無人販売や自販機も増えた。筆者が見たなかで多かったのは冷凍餃子、次いで和牛などの高級肉だ。

餃子の雪松、競合が増えても絶好調なワケ…冷凍餃子&冷凍ラーメンの“二刀流”攻勢
(画像=東京都内で見かけた冷凍餃子(右)と高級肉(左)の自動販売機、『Business Journal』より引用)

背景にはコロナ禍で出勤日数が減り、自宅での食事が増えるなか、「非接触」「24時間販売」の業態が注目され、同時期に「キャッシュレス」が進んだのもある。「すでにピークは過ぎた」とも聞くが、国の事業再構築補助金(※)を利用して無人販売を始める業者もいた。

※事業再構築補助金:コロナ禍で売り上げが減った事業者を対象に、新分野展開や業態転換などを目指す中小企業等に最大1億円を補助する制度

ただし雪松と、追随した多くの競合との違いは、「製造小売り」かどうかだ。雪松は売上高が拡大する段階で工場を新設。現在は埼玉県入間市に第三工場まで稼働させ、品質管理のもと生産している。競合の多くは「小売り」に特化して「製造」はしていない。

以前に取材した食品メーカーの担当者は、「自販機のメリットは、購入場所が近くて、中身が冷えているか、温まっているか」。また「設置までの人件費、機材代やメンテナンス料もかかるので、低価格戦略はとりにくい」とも話していた。

現在、飲食の自販機利用は普段使いが中心。「餃子」が人気なのも食卓に登場する機会が多いからだろう。

雪松の餃子やラーメンは、原材料の高騰、ラーメンのチー油や豚骨といった原材料不足とも向き合う。1000円の価格を維持するために苦労も多いそうだ。現在のところ、味が支持されるからこそリピーターが増えているのだろう。

(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

餃子の雪松、競合が増えても絶好調なワケ…冷凍餃子&冷凍ラーメンの“二刀流”攻勢
(画像=『Business Journal』より引用)
餃子の雪松、競合が増えても絶好調なワケ…冷凍餃子&冷凍ラーメンの“二刀流”攻勢
(画像=飲食店のとんこつラーメン(左)と餃子。今年5月、別々の店で撮影したが注文する人も多かった、『Business Journal』より引用)

提供元・Business Journal

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