5カ月で100万食以上売れた「冷凍ラーメン」
「冷凍ラーメンは2022年11月25日にスタート。年明けから本格展開していますが、2023年1月~5月で100万食を大きく超える販売数を記録しています」(同)
雪松店内の「冷凍ラーメン」は、現在「醤油」と「とんこつ」の2種類。1箱に3食入り(麺の組み合わせはなし)で各1000円だ。中身はシンプルで細麺とスープのみ。「焼き豚トッピングセット」(焼豚、メンマ、玉子)も3食1000円で販売されている。
商品をキリのよい1000円にするのは理由がある。餃子もラーメンも、お客が冷凍庫から商品を取り出し、購入品の合計額を自分で計算し、備え付けの箱に現金を入れる“賽銭箱”方式。キャッシュレスはなく、お釣りも出なければ領収書も発行されないからだ。
無人販売の例を紹介すると、時に「万引き」問題がクローズアップされて、ネットでは「防犯対策を地域に丸投げしている」といった無責任な声も上がる。実際はどうなのか。
「お客さまの性善説に委ねた運営ですが、大きな問題になったことはありません。かつて売れ続けて箱から現金があふれた時も、その上から現金を乗せていただけました。セキュリティー面の詳細は明かせませんが、防犯カメラも設置して遠隔で管理しています」(同)
昔からあった野菜の無人販売にヒントを得て、導入前は他社事例も研究した。
「会社のオフィスに常備する置き菓子『オフィスグリコ』(江崎グリコ)さんも参考にしました。当時、代金回収率を調べたら100%近くあり、これならいけると思ったのです」(同)

餃子は水上温泉「お食事処 雪松」の味
売れゆき好調なのは、商品の味に加えてストーリー性があるからだろう。
「餃子は、群馬県・水上温泉で現在も営業中の『お食事処 雪松』(昭和15年創業)の味を受け継ぎ、冷凍で再現しています。この店を切り盛りしていたのが3代目の松井茂店主(2020年に77歳で死去)で、当社代表の長谷川保の叔父になります」(同)
実は高野内さんと長谷川さんは、実家が近い幼なじみで同級生。餃子事業を手掛ける前は、それぞれ別の会社を経営していた。YESは、もともと長谷川さんが経営する会社だ。
「3代目が高齢になられ、4代目を継ぐ予定の息子さん、3代目の奥さんが病気で亡くなった後、長谷川が『雪松の味』を引き継ぐことを決意し、私も一緒にやることになりました。雪松の餃子は、野菜中心で肉は全体の1%程度。ニンニクと生姜が多く、皮は薄皮です」(同)

当時は飲食未経験だった2人が研究を重ね、松井店主に作り方を教わって帰社すると味の再現を繰り返した。各地の人気店も実食。都内の「亀戸餃子」(東京都江東区)、餃子で有名な宇都宮市の「みんみん」(栃木県)なども試食した。
「2016年から味の継承を始め、2年近く試行錯誤した末、餃子を完成。3代目に試食してもらったのですが、『これならまったく一緒だよ』というお墨付きをもらいました」(同)
2018年9月、埼玉県入間市に有人の飲食店を開業。6個入りの「餃子定食」(300円)を提供したが、連日大行列となり、すぐ売り切れてしまう。1カ月足らずで有人販売はやめて、同店舗でも販売していた冷凍餃子のみに絞り、現在の無人販売に切り替えた。