女子を優先するとはいえ一定以上の学力は必要

 一方で女子枠には、もともとの募集人員のなかに女性専用の入学者枠を設けていたり、一般入試の一部科目が免除されたりするという理由で、一般入試の受験生を不利にしてしまっていると主張するコメントも見かける。一部では「女子学生の数を増やすことが最優先され目的化している」「とにかく女子学生が増えれば、それでいいのか」という批判の声も少なくない。

 筆記試験で「数学Ⅲ」を課さない大学や筆記試験を課さない大学もあり、入学者差別を訴える声もあるが、名古屋大としてはそういった意見をどう受け止めているのか。

「名古屋大の女子枠では、最低限の学力があることを前提としています。具体的には、面接と書類審査のみならず、大学入学共通テストを課し、基礎学力のある生徒のみを選抜しています。共通テストで一定以上の点数を獲得し、ものづくりにかける思いとやる気を面接や小論文で強く訴えることができないと、合格できない仕組みにはなっています。せっかく入学しても授業についていけなかったり、学びが楽しくなかったりしては意味がないので、基礎学力の有無に関しては慎重に判断させていただきました」(同)

 大学教育の質を落とさないためにも、名古屋大では一定以上の学力基準を保っているようだ。

「我々としては、男女比9:1の現状こそがジェンダーバイアスが偏りすぎている、異常な事態だと重く受け止めています。それに今の女子枠は、学校推薦型選抜全体の募集枠の13%(一般入試も含めた場合1.3%)にすぎず、そこまで高い数字ではありません。募集枠を変動させるのは、たしかにアクセプタブルではない面があると思うものの、これからの社会ニーズに合わせるためには、女子を受け入れる環境は早急に用意しなければいけません。女子生徒は、女子枠と同時に一般枠でも受験できるようになっているので、選択肢として自然と工学部への受験を視野に入れられる、入り口が広いという認識を持って受験を検討してほしいです」(同)