実体理論者はブランド経験から実際のパフォーマンスを高める
パークとジョンはさらに、実体理論者は増大理論者よりも、ブランド経験によって自己効力感を高め、それによって実際のパフォーマンスをも向上させることを実証しています【註10】。自己効力感とは、特定状況において目標を遂行する能力についての自己評価、すなわち「自分はできる」という信念のことをいいます。
参加者にアメリカの大学院入学試験(GRE)の問題を30分間で30問解いてもらう実験を行い、30問に含まれる15の難問の正答数を、前述したブランド・パーソナリティを持つMITの名前の入ったペンを使用した場合と普通のペンを使用した場合とで比較しました。その結果、実体理論者のみ、MITペンを使用した方が難問の正答数が高くなったことを明らかにしています。
飲料水を対象とした実験も行っています。参加者に「運動能力の向上」というイメージが定着しているゲータレードとそのようなイメージが弱いアイスマウンテンのどちらかの水を飲みながらハンドグリップを握ってもらったところ、実体理論者のみ、ゲータレードを飲んだときにパフォーマンスが上昇したことを明らかにしています。実体理論者は、パフォーマンスや知性と関連するイメージを持つブランドの使用・消費によって自己効力感を高め、その前向きな気持ちがパフォーマンスの向上につながったことも確認しています。
人格観によって好まれるブランド広告のメッセージは異なる
パークとジョンは、ブランド広告で示されるメッセージの分析もしています【註11】。実験では、まず前述したヴィクトリアズ・シークレットのブランド・パーソナリティに対する参加者(女性)の関心が高いことを確認し、続いてこのブランドの広告を見てもらい、広告商品を評価してもらいました。また、広告には「最新の美的センスが自分にあることを他者に示す最高の機会になる」というシグナリング・メッセージと「最新の美的センスを学ぶ最高の機会になる」という自己向上メッセージのどちらかを示しました。分析の結果、実体理論者にはシグナリング・メッセージを、増大理論者には自己向上メッセージを用いた方が広告商品への評価を高めるのに有効であることが示されました。消費者は、自分の人格観と一致するメッセージを発信するブランドを好むことがわかります。