いずれも社員証を確認の上、取材した。なかには、飲み会でのやり取りをICレコーダーに録音しているケース、約5年間継続的につけている日記帖にその日の就労状況に関して記載している例などもあったので、社内の相談窓口や労働組合に行くことを勧めたのだが、ある社員は次のように語った。
「相談や申請して、社内で変な目で見られたくない。守秘義務は守るとしていますが、会社の雰囲気的に絶対身バレすると思います。仕事は楽しいし、やりがいもあるので、会社に居づらくなるのも、辞めるのも嫌です。こういうやり方は批判を受けるかもしれませんが、もっと会社の雰囲気を良くしたいと思って取材に応じました」
大きなパワハラ案件が発覚する陰には、上記のような小さな職場トラブルがたくさん発生していることが多い。同僚が命を絶つという悲劇に至る前に、なんとかすることはできなかったのか。パワハラ自殺に関し、トヨタ労働組合は次のような見解を示す。
「事実として、我々組合員がしっかり労働者に寄り添う姿勢にあったのかをしっかり振り返りを行いたいです。職場の組合員と連携を取りながら、困っている労働者がいないかしっかり見ていかなければならないと思います。相談を受けるまで動かない待ちの姿勢ではなく、積極的に声を拾っていく方針です」
またトヨタ渉外広報部は次のように話した。
「お亡くなりになられた方に対して、心をこめて冥福をお祈りいたしますとともに、ご遺族の方に改めてお悔みを申し上げたいと存じます。ご遺族のお気持ち、亡くなられた大切な仲間のことを常に心にとどめながら、なぜこのようなことが起きたのか、改めて徹底的に調査による真因の究明を進めることにより、あらゆる観点から再発防止に努めてまいります。
また、ご指摘いただいた事例に関して、具体的な部署名などがわからず、個別に事実確認は難しいため、直接のコメントは差し控えさせていただきます」
より良い職場づくりは労使双方が望むことだ。今回紹介した証言に関して、法律的な見解を山岸純法律事務所の山岸純弁護士に聞いた。