11月に発表された日本経済団体連合会実施の「新卒採用に関するアンケート調査結果」によると、新卒採用で最も重要視されたのは今年もコミュニケーション能力だった。13年連続で1位。仕事においてコミュニケーション能力が必須であることは、もはや常識と言えるだろう。
そのため、コミュニケーション能力の低さに悩む人も多く、実はカウンセリングの相談内容としても多い。今回は私がクライエントに勧めている改善方法をご紹介したい。
話すのが苦手な原因は、頭の整理にある
コミュニケーションが苦手な人に特に多いのは、やたらと話の長いタイプと、口数が非常に少ないタイプの2種類である。前者は、話は長いが度々主語が抜け時系列もバラバラ。情報量は多いが、言いたいことが不明瞭で要領を得ない。反対に後者は言葉足らずで、意思の疎通が難しいのが特徴だろう。
一見、対照的な両タイプだが、実はどちらも「頭の整理ができていない」という共通した問題点を抱えている。
相手に何を、どう話し、分かって欲しいのか。コミュニケーションが得意な人は、これらをある程度頭の中で整理し、組み立てて話しているもの。このプロセスが適切に行えていない事が、コミュニケーションが上手くできない一つの要因と言える。前者は整理せず思い浮かぶままに話し、後者は整理をしようと考えても上手くまとまらないのだ。
そのため、これらのタイプの場合、話し方や表現力、傾聴力の向上よりもまず、話す前の頭の整理能力を上げるべきである。
話すことにタイトルをつける
話したいことの整理には、ラベリングが効果的だ。ラベリングとは、簡単に言えば「名前」をつけること。カウンセリングでは、自分の感情に気づきネガティブな感情から抜け出しやすくなるための「感情のラベリング」という方法がよく用いられるが、ラベリングは話の整理にも役立つ。
実際私は話をする際、特に大切な3つの要素に名前をつることで頭を整理しており、これを「トリプルラベル法」と呼んでいる。
ラベリングする1つ目は、話したい出来事である。会議における議題や、書類ファイルに名前をつけるイメージで、相手に話したいことにもタイトルをつける。
例えば、「今年の大河ドラマ『真田丸』について」や「年末年始の予定について」といった具合だ。こうすれば、頭を整理できる上に、話のはじめに「〇〇についてですが……」と切り出す事ができ、聞いている側も理解しやすくなるメリットも得られる。当たり前のことのように思えるが、多くの人はやっていないものだ。そのため話が無駄に長くなり、相手に伝わらないばかりか、話している本人さえ、自分が何の話をしたかったのか分からなくなるといった問題が起こる。
やり方としては、ラベリングの文字数を決めておくのが良い。何文字でも良いとなると、あれもこれもタイトルに入れたくなり、結局整理ができなくなってしまう。また、長いタイトルほど、何が言いたいか伝わりづらいものだ。
最も話したい一部分だけや、話全体をざっくりで構わないので、短くラベリングすることを意識して欲しい。多くても15~20字が適切だろう。
話が下手な人ほどここが乱れる
2つ目は「いつ・どこ・誰」のラベルである。この3つが整理されていない話ほど理解に苦労するものはないが、コミュニケーション能力の低い人ほど、これらがごちゃごちゃで不明瞭な傾向がある。特に、悩みや嬉しい出来事など、感情が大きく動いた話ほど未整理のまま話される事が多いので、こうした話題の時には一層気をつけるべきだろう。
先ほども例であげた『真田丸』でいえば、「つい先日最終回を迎えた・戦国時代末期の大坂を舞台とした・堺雅人演じる真田幸村」の話、となる。いつの話か、話の舞台はどこか、話の主な登場人物は誰か。この3点にラベルを貼るだけで、随分話が簡潔になる。なお、この2つ目のラベリングも短い文字数を意識すると良いだろう。
気持ちを伝える事が大切
3つ目は「感情」のラベルだ。実は、コミュニケーション能力が低い人ほど、出来事レベルの話に終始して、自分の感情を言葉にしない事が多い。また、自分の感情に鈍感で、何を伝えたいのか分からないまま話す人も、同様にコミュニケーション能力が低いとみなされる。感情を言語化するのが得意な場合は、そのままラベルにすれば良いのだが、そうでない人は、「嬉しい」「幸せ」「好き」「感動」「怒り」「不安」「悲しい」「辛い」といった中から最もしっくりくるものを選んでみると良い。
ただ「〇〇だから」といった理由や考えに当たる部分は、ラベリングする必要はない。ラベリングは短くシンプルに行うからこそ頭の整理になるのだが、自分の考えを単語レベルで短くすることは非常に難しい為だ。もちろん出来るに越したことはないが、まずはご紹介した3つをしっかりとラベリングすればコミュニケーション能力は向上する。また、頭の中で行うよりも可視化する方が整理はしやすいので、慣れるまでは紙に書いて行う方が良いだろう。
コミュニケーション能力の問題は、原因も様々だが、特に話すことに苦手意識を抱えている方には、「トリプルラベル法」は非常に有効なので、是非試してみて欲しい。
文・藤田大介(DF心理相談所 代表心理カウンセラー)/ZUU online
【関連記事】
・子どもの「金融教育」は何歳から始めるのがベスト?
・40代に始めておきたい「相続対策」 早めにやっておきたい2つのこと
・子供1人の教育費は進路によって3,000万円も違う 私立か公立か、留学するか……?
・「子どものMBA費用を払う親」が増加傾向?なかには自宅まで売る親まで
・【初心者向け】ネット証券おすすめランキング(PR)