出題ミスは「教科書と現実の差」のはざまで起きる。現実より教科書の記述を優先する必要も

 構造的に、毎年、全国で行われる入試問題においてノーミスを徹底することは難しいといえそうだ。であれば、主題ミスに遭遇する可能性を念頭に置き、特にミスが生じやすい分野や問題の形式を知っておけば、受験生にとって有利に働く可能性があるかもしれない。

「問題が含む要素が、教科書に書いてあることだけで構成されているならミスは起こりません。ミスが生じやすくなるのは、教科書には簡略化して書いてある知識と、実際の現象との差がある場合です。

 たとえば、2022年の大学入学共通テストで出題された燃料電池についての問題は、『準ミス』といえそうなギリギリなものでした。燃料電池は水素と酸素を反応させて発電するもので、自動車や家庭用発電機器などでの活用が進められています。そのしくみは非常に複雑なのですが、教科書では簡単に説明されています。試験問題では実際の燃料電池について出題されたのですが、教科書に明確に書かれていない部分で解答が1つに決まらない出題があったのです」

 燃料電池に限らず、化学実験や有機物のふるまいなど、実際の現象において教科書に載っていない反応や挙動が起こる事象について、出題ミスが起こる可能性は高くなると若原氏は言う。

「難関大入試では教科書に書いてあることを出題しても点差がつきませんから、難関大であるほど『攻めた問題』が出題されます。何事も挑戦にミスはつきものですが、とはいえそこは受験生の人生を左右しかねないわけですから。問い方の工夫1つであいまいさを排除できる場合もありますし、答えが1つに決まることを大事にしてほしいですね」