大手学習塾のものとみられるテキストで、東京医科歯科大学など難関大学の化学の入試問題を「問題不成立」としたり、一意の解答が導き出せない不備があるとして出題ミスを指摘していることが一部で話題を呼んでいる。指摘の記述には

「どこか一箇所修正して済むレベルではない完全な不成立問題となっており、全体的に解答不能な稀代の悪問」

「出題者の脳内にあるであろう想定模範解答を忖度して答える必要がある」

「出題者は単に問題を難しくしようと作成するのではなく、正しく一意に定まる問題を正確に作成する能力を身に付ける努力をし、またそれを複数人で検証することを強く求める」

などと問題作成者への「厳しい文言」もみられる。なぜこのようなミスが発生するのか、そして生徒はどう対処すればよいのか。予備校講師の若原周平氏に解説してもらった。

出題ミスは「数年に一度」起きている。その背景にある2つの理由とは

 最初に確認しておきたいのが、難関大の化学入試問題において、出題ミスはよく起こるものなのか、ということだ。

「毎年というほど頻繁ではありませんが数年に1度は起こるので、我々としてはそう珍しく感じるものでもありません。出題ミスが特に難関大で起こるという印象を持たれやすいのは、2つの理由によります。まず、問題を難しくして生徒を振るい落とそうとする場合です。過去のパターンとは違う問題を作る際に、ミスが生じやすくなります。そしてもう1点、難関大で起こることはメディアやSNSなどで取り上げられやすいということもあるでしょう。大阪大学や東京医科歯科大学など、国立上位校での出題ミスはやはり話題になりました」

 ところで、実際のところ作問者たる大学教員は「正確に作成する能力」を身につけておらず、問題を「複数人で検証」する体制も確保されていないのだろうか。

「大学教員に知り合いがいます。問題の中身についてはもちろん何も教えてくれませんし、こちらから尋ねたりもしませんが、ダブルチェックは必ず行っていると聞いています。ただ、作問を担当する大学教員は研究や教授のプロではありますが、大学入試問題作成のプロではないわけです。能力は抜群に高くても、試験問題に落とし込んだ時に生じるミスをゼロにすることは難しいです。試験問題の作成に限っては、日ごろから模試の問題を作成している予備校講師のほうが得意でしょうね」