急成長から一転、コロナ禍で倒産の危機に

 河野氏はオーナーをなんとか説得して、坪5000円で2階と3階の2フロアを合わせて約20万円で借り、ネットで集客しながら1フロア20坪のスペースの貸し出しを始めたという。

「不動産を安く仕入れられたので、3階のフロアを工事現場の仮事務所として25万円で貸すと、すぐ5万円の利益が出ました。2階は1時間一人100円として、50人集まることができる貸し会議室を1時間5000円で用意したら月100時間の売上、約50万円がそのまま毎月の利益になったんです。その次は平日の結婚式場を借りて、売上を折半する仕組みにしました。そこからはどんどん事業が大きくなっていきましたね」

 2005年の創業時はひと月の売上は50万円だった月別売上は、2019年には約60億円まで成長。法人向け貸会議室ビジネスを起点に周辺ビジネスの内製化も成功させ、2017年には東証マザーズに上場した。

「売り手よし・買い手よし・世間よしの三方良しで、社会に必要なビジネスって勝手に大きくなっていくんですね。売上=客数×単価×回転数ですので、単価などを大きくしていけると、事業規模は雪だるま式の大きくなっていきます。1時間一人100円の会議室から始まった貸し会議室の事業ですが、単に空きスペースを貸すだけでなく、備品の貸し出しや懇親会、宿泊なども用意していくことで、客単価もどんどん上がっていきました」

 2019年には時価総額3000億円に近づいたが、2020年から3年間で116億円の赤字を被り、株価も10分の1ほどに急落するなど、コロナ禍では大きな打撃を受けてしまう。

「人が集まるビジネスをしていたのでコロナ禍では非常に頭を悩めました。2020年2月には銀行さんにお金返さなきゃいけない状態に陥ってしまいます。当時、会社の総資産は1200億円ほどでしたが、そのうち800億円が借金なので本業が赤字になると、すぐに返済を迫られてしまうわけです。TKPの家賃と人件費などのコストは毎月30億円ほど。手元のキャッシュは60億円しかなかったので、そのまま行くと2ヶ月で倒産です。銀行さんに直談判し、貸越枠を組んでもらいました。毎月30億円の赤字なら360億円の現金を持って1年冬眠しようと考えたんです。不動産も売れるだけ売って、残りの150億円の調達枠を銀行さんに確保してもらいました」