大分県立雄城台高等学校の創立50周年記念講演会が行われ、貸会議室運営の国内最大手である株式会社ティーケーピー社長・河野貴輝氏が登壇した。16回生として同校を卒業した河野氏はその講演で創業の経緯や半生について語り、高校生たちへメッセージを送った。

弁護士の夢を諦めてビジネスの世界へ

「私が生まれ年がちょうど雄城台高校の設立年になります。この半世紀の私の人生を振り返ってみて、いろいろ浮き沈みがあってピンチがありました」という河野氏は、大分雄城台高校、慶應義塾大学商学部を卒業後に伊藤忠商事へ入社。

 日本オンライン証券(現auカブコム証券)設立に参画し、イーバンク銀行(現:楽天銀行)取締役営業本部長を務めた後、2005年に株式会社ティーケーピーを設立した。2017年、ティーケーピーは東京証券取引所マザーズへ上場。河野氏は「EY Entrepreneur Of The Year 2017 Japan」で大賞を受賞している。

「私の祖父が別府でいくつも事業をやっており、夏は海の家などもやっていたので、子供の頃から私も店番をしながら、ビジネスのおもしろさを子供心に感じていました。高校生の頃は弁護士になりたくて、大学は国立の法学部を目指しましたが、浪人生活を経て結局、慶応大学商学部に進みました。当時はとても残念に感じていましたが、思い返すと商学部に進んだことでビジネスの世界でやっていく決心ができたと今では思っています」

 大学時代は結婚式場やレストラン、不動産の仲介業などのアルバイトを経験。その資金を株式へ投資し続けたことなどもあって、大学卒業後は伊藤忠商事の為替証券部に入社・配属されることになったという。

「そこでいろんな勉強ができたことが後々、ネット証券会社、ひいてはTKPを立ち上げることにつながっていきます。日本オンライン証券を先輩たちと立ち上げた翌年、2000年には27歳でイーバンク銀行を設立しました。銀行免許をとるため80億円の資金集めに走り回ったりもしましたが、ネットバンクという事業は当時まだ早すぎて、銀行免許を取得後も資金繰りなどなかなか難しかった記憶があります」

 ティーケーピーを立ち上げたのは32歳のとき。取り壊しの決まった3階建てのビルを使い、一人100円の貸し会議室を六本木で始めたのが創業のきっかけだと振り返った。

「そのビルの1階では飲食店が営業していて電気とかも普通にきているのに、2〜3階は立ち退きが終わり、取り壊しが始まるまで使われない状況を見て、僕は「もったいない」と感じたんですね。オーナーさんは「せっかく立ち退きが完了した物件に、また事業者を入れて立ち退き料を要求されたら困る」とのことで、空室のままにしていたんですが、そんなオーナーさんの不安解消にビジネスチャンスがありました」