■ 詐欺広告には特徴がある

 昔から「サポート詐欺」へと誘導する「詐欺広告」は多くありました。しかし、この1~2か月をみると、個人的にはいつもより多く出稿されていると感じています。しかもしつこい。

 各WEBサイトの担当者はどこも、こうした「詐欺広告」が紛れ込まないよう対応していますが、ブロックした数だけ新たに生まれているのが現状なので、追いつくはずがありません。

 残念なことに、今はどんな信用あるサイトでも「詐欺広告が表示される可能性がある」とユーザー側も認識しておくことが重要です。

 とはいえ、全てが全て怪しいものではありません。真面目に出稿している企業広告が大半です。また、サポート詐欺への入り口となる広告には傾向があります。それさえ把握していれば、多少は被害を避けられるでしょう。

 詐欺広告に実際に記載されている文言(キャッチコピー)を次で紹介します。見ていただくと分かるとおり、「日本語がどこかおかしい」と感じるはずです。この傾向を把握しておくだけでも、クリックすることを回避できます。

【実際にある詐欺広告の文言】
・家で料理する おいしい食べ物
・家族全員のためのレシピ

 次に知っておいて欲しいのが、「人の興味を引く文言」のパターン。実際にあるのが以下のものですが、これらは添えられた写真のインパクトでも興味を誘ってきます。

【実際にある詐欺広告の文言】
・台風が接近しています(※見出し画像のもの)
・おいしい料理
・心臓専門医は言った
・日本時間15時32分
・柏駅徒歩4分のホテル
・約60種類の物質
・福島をめぐる異例の事態
・ホテルでのリラックスした滞在
・石垣島の星空が目の前に

 このパターンを詐欺だと見抜くのは大変ですが、ポイントはあります。

 「どこの宣伝なのかが不明(会社名、店名、ホテル名などの具体的記載がない)」だったり、「社名は記されているものの宣伝内容と時期が一致しない(現在11月なのに「台風が接近しています」が掲載)」、など不審点があります。

 そして上記の中で、要注意なのが「福島をめぐる異例の事態」という広告。これは645件確認していますが、リンク先が摩訶不思議なのです。

NHKの広告かな?いえ、これは偽なんです ネットに溢れる詐欺広告について
(画像=『おたくま経済新聞』より 引用)

 大半には不審なURLが指定されているものの(最初は海外サイトのコピーサイト)、645件中の1~2割程度に、大手メディアの正規URLが設置されていました。クリックすると朝日新聞、時事通信、読売新聞(海外版含む)、TBS、日本テレビ、などの本物のサイトへと誘導されます。

 見た目的には「福島をめぐる異例の事態」という同じ広告を、大手メディアが同時に出していることになります。が、もちろんそんなことはありません。

 それぞれの広告のデータをみていくと、出稿主とリンク先の企業名が不一致。さらに同じ広告にもかかわらず出稿主の名前はバラバラ。他人が勝手に、大手メディアのURLを広告に掲載しているようです。

 最初は目的が全くのナゾだったのですが、もしかして……と思いつくものがありました。大手メディアのリンクが張られた広告は、掲載するWEBサイト側を信用させるためのダミー。

 広告の審査は「広告配信サービス」に加えて、広告を掲載するWEBサイト側でも不審な広告がないか定期的行っています。このパターンはWEBサイト側の担当者を欺く仕掛けではないかと考えました。

 審査のときにリンク先が「TBS」や「時事通信」なら確実にOKするはずです。そして広告ビジュアルが一致したものが多い場合には、人によってはよく中身を確認せずに見過ごしてしまうこともあるでしょう。

 あくまで可能性でしかありませんが、もし正解なら悪質さ際立つ手口。勝手にリンクされた大手メディアにとっても大迷惑な事態です。

■ Googleの対応に期待……したい

 「詐欺広告」と呼ばれる悪質な広告は、最近になって登場したわけではありません。インターネットへの広告配信サービスが始まった当初から長年あり続けている問題。

 よって、今回記事で紹介したからといって、詐欺広告が激減するわけでも、滅亡するわけでもありませんが、詐欺にひっかからないための条件の一つに「詐欺の手口を知っておくこと」というものがあります。

 本稿がどの程度読まれるかは不明ですが、微力でも読者のみなさまの力になればと考えています。そしてGoogleには……そろそろ本気で対策してほしいところ。

 現在詐欺広告があふれているのは、「審査の甘さが原因」というのが明白なのですから。また国などからも、対策を促すなど働きかけをするべきです。

 まぁ、とはいっても、おたくま経済新聞のような知名度も低い、しかも15年しかやっていない小規模メディアに書かれた考えなど、届くことはないでしょう。そう簡単に世の中はかわりません。

 だからせめて、読者の方が詐欺にひっかかる機会を減らすことに繋がれば……それだけで、書いた甲斐があるというものです。