ハマスの責任はかなりあるが、表面的なパレステイナ市民の被害は間違いない事実なので、そこを重視すればそうなるだろう。
ここで一番重要な論点。米国の若者は歴史やこれまでの経緯をあまり勉強していない。米国が伝統的にイスラエルを支援する理由。イスラエルが中東唯一の「民主主義」国家だからだ。その論点が、イスラエル支持に反対する若者があまり認識していない側面だ。
日本人はあまり話題にしないが、絶対悪のナチスによる「ホロコースト」も、1つの大きな理由だ。いまも昔も、反ユダヤ人の勢力は健在だ。最近特に欧州ではユダヤ人への憎悪、迫害の動きが、顕著だ。ホロコーストへの反省と再発防止も大きなイスラエル支持の理由だ。イスラエル人は、民族浄化に怯え、自分の存在まで否定されるように取る。だから「過剰防衛」も平気でやる。それが日本人の多くと米国の若者を批判に導く。
だが民主主義かどうか、これが米国中枢のイスラ支援要因として、一番大きい。
10月7日以前からネタニヤフは、独裁的な一面を強めて、司法まで軽視するようになってきた。さらに米国が眉をひそめる国際法違反の入植行為を進めている。だからこそ、彼がNYの国連で演説して、ウエストバンクのほぼ全てまで占領する勢いを発表した時、ホワイトハウスはさらなる距離を置くようになった。それもありDCへの招待がなかった。
ネタニヤフのやり方は、イスラエル国内の支持を失いつつある。「10月7日の悪夢」を未然に防げなかったこともあり、ひと段落したら、表舞台から消えるだろう。
とは言うものの、そんなイスラエルでも一応、三権分立の国民主権。ハマスが平気でやるような人質を取る、人間の盾にするなどのことは「倫理観」が許さない。
周りのアラブ諸国やイランなどに民主主義などない。イラン1つをみても「報道・言論の自由」がない。ヒジャブに関する女性の権利をみよ。サウジもそう、ほぼ全てのイスラム諸国・アラブ諸国が、専制国家。権威主義国家。国民が声を上げられない。
最後は「アッラーの思し召し」イランのホメニ師などに最終決定権がある。
独裁者が自分勝手にその国の行方を勝手に決める。最後は「アッラーが言っている」で、国内の反論を許さない。開戦も可能になる。
善悪論で言えば、なにがどこまで正しいか、正義かの結論は多分、永遠に出ない。ケースバイケースでの細かい議論は人類の宿題だ。だが、民主主義国家も間違いもやった。だがそれなりの正当化できる説明が可能だ。
米国は多数の戦争をやってきた。大昔をみれば違うが、ほぼ全ての相手が専制国家・権威主義国家。「民主主義同士は戦争を起こさない」という考えが、米国には根強い。
筆者は過去40年くらい、米国人識者100人以上とこの種の議論をした時に確信したこと。水と空気と同じくらい当たり前のことだ。
逆に上記が、この種の議論をする時、日本人の思考からすっぽり抜け落ちている部分だ。天皇利用の権威主義で、あんな戦争をやらされた。敗戦で気が付かないうちに、「国民主権」「言論・報道の自由」を押し付けられた。英米仏など世界の先進国の殆どが血を流して、革命で民主主義を勝ち取ったのとは全く違う過程を経た。だからあまり認識がない。
イスラエルもアラブ・イランなどの専制・権威主義国家も同列、人道的なことを最優先にする、平等に扱うのが良いと信じている。
上記のような理由で米国はイスラエルを基本的に支持する。だが、ではイスラばかりの肩をもつのか?答えは「否」だ。昔のオスロ合意、2020年のアブラハム合意ではイスラエルとアラブ首長国連邦の仲介をした。
少し前に中東への関心が薄れている米国の隙を狙った形で、中国がサウジ・イランの仲介をした。
中東は確実にイスラエルとアラブ諸国やイランなどとの和平的な動きが加速していた。これまでなかった現象といえる。その一方でパレステイナ問題は置き去り。そんな感じなので、イランの武装勢力と組んだ形といえるハマスが最後の「特攻隊」のようなイスラを攻撃をした。いつも以上の10倍返しが100倍返しになるのを覚悟したはずだ。それが現在の悲劇を招いている。バイデンはウクラと同じ、困っている。折角少しは落ちついて対中国に専念できると思ったのに飛んでもない展開になった。
日本人の多くはウクラ情勢と同じように「停戦」という。目先のことをみればその気持ちは分かる。では「どこの誰がどのようにして、解決できるのか?」国連ではない?中国に任せるのか?
日本人の識者は、「イランと仲が良いので、日本はなにか仲介できないか?」とかいうなにも分かっていない。50年前の石油ショックを勉強するべきだ。さらに、「日本はハマスと対話するべきだ」という。飛んでもない。人道的なこと、お金が欲しいというなら別だが、停戦・和平につながるようなことは日本はできない。ハマスにもイスラにも全く相手にされない。世界と議論しないで想像だけの思い込みする識者がTVで発言する。
「停戦」だけ言って解決策も示さないで終わり。無責任といえる。
現在、明らかに「やり過ぎ」と批判可能なイスラエルを、今でも、たぶんこれからも半永久的に米国が基本的に支持しつつ、昔のように、人道的なことに配慮しつつ、唯一の解決策「2国家共存」に向けて努力する。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?