序盤は甲府のプレスが不発に

両軍ともキックオフ直後から[4-2-3-1]の基本布陣で臨む。前半1分、甲府はピーター・ウタカと飯島陸の両FWが最前線で横並びとなり、2トップを形成。この2人が浙江の2センターバックに寄せ、アウェイチームのパス回しをMFグー・ビン(左サイドバック)の方面へ誘導したものの、ボールを奪いきれなかった。

甲府のプレスが掻い潜られた理由は、基本布陣[4-2-3-1]の浙江のMFアンドリヤシェビッチ(トップ下)が自陣左サイドへ降り、自軍のパス回しを手助けしたこと。このときに甲府のFW宮崎純真(右サイドハーフ)がグー・ビンからアンドリヤシェビッチへの縦のパスコースを塞ぎきれなかったため、ホームチームは浙江のパス回しを断ち切れず。この直後に浙江に攻め込まれてしまった。

浙江のDFリャン・ノクハン(センターバック)が自陣ペナルティエリア付近でボールを保持した前半5分には、ここへの甲府のプレスが緩く、同選手からアンドリヤシェビッチへのロングパスが繋がってしまう。甲府の最終ラインと2ボランチ(中村亮太朗と林田滉也の両MF)の間もぽっかり空いていたため、ここに立っていたアンドリヤシェビッチに悠々とボールを捌かれている。この場面を境に甲府は相手最終ラインへのプレスを控え、自陣へ撤退するようになった。

ヴァンフォーレ甲府 篠田善之監督 写真:Getty Images

篠田監督も気にしていた試合序盤

甲府の篠田監督は試合後に行われた会見で、「相手のストロングポイントを抑えることが、(試合の)立ち上がりはうまくできませんでした」と率直に語っている。これに加え質疑応答のなかで、浙江のMFアンドリヤシェビッチの対応に苦労したことも明かしてくれた。

ー相手のストロングポイントを、試合の立ち上がりに抑えられなかったというお話がありましたが、そのなかでも先制点を奪い、前半は自分たち(甲府)のペースで試合を進めることができていたと思います。この一番の要因は何だったと、監督はお考えですか。

「相手の11番の選手(アンドリヤシェビッチ)が、うちのMF林田滉也(甲府のボランチ)の裏に立ったり、サイドにボールが出たら、縦に3人相手選手が並ぶ形を、試合の立ち上がりにうまく作られました(アンドリヤシェビッチ、相手サイドハーフ、サイドバックの計3人)。そこにボールを供給されることが何度かありましたが、徐々にそのスペースを埋めました。あとは飯島とウタカの2トップによる、ボール保持者への制限(ボール保持者への寄せ)がうまくできたことで、相手の攻撃に対する自分たちの守備がうまくいった。そこがひとつ前半のポイントだったと思います」

試合序盤にハイプレスを掻い潜られ、やむなく自陣へ撤退する場面もあったが、基本的には敵陣でボールを奪おうとする姿勢を示し続けた甲府。最終ラインも試合全体を通じて高めに設定されていたが、背後のスペースのケアは行き届いていた。

最前線と中盤の距離が開いてしまうことで、プレスの連動性が低くなる場面が試合序盤に見受けられたが、時間の経過とともにこの問題も解決。前半アディショナルタイムに生まれた甲府の2点目も、元を辿ればウタカと飯島が相手のパスワークを右サイド(浙江にとっての自陣左サイド)へ追いやったことから生まれたものである。相手の左サイドバック、グー・ビンが繰り出した強引な縦パスを甲府の右サイドバック関口が回収。これが最終的に宮崎のクロスやジェトゥリオのゴールに繋がった。


ヴァンフォーレ甲府 DF井上詩音 写真:Getty Images