会社が持つ自由な空気を大事に
――新規事業を進めるうえでは、御社の伝統を重視しながら今までのキャリアで培ったノウハウを注入されているのかと思います。そのバランスはどう配慮されているのでしょうか。
越田 当社は伝統的に自由な空気のある会社です。カッチリとした会社だと指示されたことはやるけれども、主体性が発揮されないので、自由な空気を大事にしていきたいと思います。これからどんな事業が上手くいくのかは誰も答えが分からないと思うので、自由なアイデアがどんどん出て、多くの事業を並行して進めることが大事ですが、優先順位の付け方が問われます。イノベーション推進室が向こう3年でさまざまな知見を蓄積すれば、新規事業進出のポートフォリオやリスク管理の手法を確立できると思います。今の段階でロジックを固めてしまうと成功の芽を摘んでしまいかねないので、いろいろな事業の可能性を探索しているところです。
――業務運営において KPI(重要業績目標指標)やPDCAには、どのように取り組んでいますか。
越田 当社の社長は「計画に時間を割いてばかりいないで、まずは動いてみなさい」と社員に話しています。リテール店舗などは客数、商品別売上、広告効果など分かりやすい指標があるためKPIに類した指標を用いています。一方、全社的には、ただアポや面談が多ければいいのかという懸念に加え、KPIやPDCAという言葉が独り歩きしたり、形式化しては意味がないため、KPI、PDCAで本質的に目指している効果を自然に意識できる仕組みが重要と思います。そのためにも、なぜそれをやるのか、どのようなリスクや課題があるか、期待できる収益はどれくらいか、最大損失はどれくらいかなどを各個人が深く意識して、それらを全体で見える化して共有できる仕組みをつくっていきたいと考えています。
――リーダーシップの発揮でとくに大事にされていることは何でしょう?
越田 先ほど申し上げたように、絶対にこれが正しいという答えは自分では分からないと思います。独自に進めていたと思う事業を他社も進めていたとか、8合目まで進んで失敗したとか、そういうケースはたくさん発生します。そのためには皆でコミュニケーションを取って多くのアイデアが出る仕組みを重視しています。
――女性社員の幹部登用はどんな状況にありますか。御社は上場企業ではないので、政府が示した2030年までに女性役員比率を3割以上にする目標に縛られませんが、それでも企業規模は上場企業に相当します。
越田 女性の管理職はおりますが、役員、取締役はまだ誕生していません。性別、年齢、経歴を問わず、評価されるべき人が評価されて、然るべき役職につくことが重要だと思います。「男性何人、女性何人、何歳以下何人」などの目標を設けても、その数値目標にしたがって昇進した人が満足するのか、幹部として仕事がしやすいのかは疑問です。
――最後に注目されている経営者がいましたら教えてください。
越田 星野リゾートの星野佳路社長の考え方に共感できる部分が多いです。フラットな組織、偉い人のいない会社、理論で決める経営、自分が引退しても経営が回る体制などに共感しています。
(構成=小野貴史/経済ジャーナリスト)
※本稿はインフォメーションです。
提供元・Business Journal
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