AI技術を用いた画像解析技術

――いずれ然るべき時期が来れば社長に就任されると思いますが、後継者を意識されたキッカケは何でしたか。

越田 父からも母からも後継者になるように言われたことはありませんが、大学生になった頃に将来は後継者にならなければならないと考えるようになりました。それで留学をして、在籍していた学部は理系でしたが、商社に就職したのです。銀行に転職したのも、いろいろな経験を積んだほうが後継者になるために役立つのではないかと考えたからです。

 後継者になることを父と話すようになったのは2~3年前からで、数ヶ月に一度は会って、いろいろな話し合いを続けてきました。ただ、父からは「来てほしい」というハッキリとした要請はなく、自然に後継者への道が固まったという流れです。

――入社されたのは2022年ですが、最初から取締役に就任されたのですか。

越田 いえ、昨年7月に入社したときは海外事業本部事業管理部長でした。具体的な担当業務がなく、三菱商事や銀行時代に知り合った人など100人以上と面会して、新しい事業の種を探したり、困りごとがないか聞いたり、マーケット情報を収集したり、提携先を探索したりしていました。今のポストに就任したのは今年4月です。

――所管されている事業は何でしょうか。

越田 デジタル、AI、脱炭素、再生可能エネルギー、リユースなどをキーワードに当社の事業分野である自動車、半導体、通信、二輪にどう応用するかを検討しています。すでに当社は2000年頃からIoTやクラウド事業を行っているので、それらの事業も引き継いでいます。

――今のお話に関連しますが、越田取締役は、AI技術を用いた画像解析技術をコシダテックを支える大きな柱のひとつに育てたいという方針をお持ちですね。どのような事業を計画しているのでしょうか。

越田 踏切事故を防止する目的で「踏切内 AI 滞留検知システム」の実証事業を進め、特許も出願中です。線路内に滞留する物体を大小問わずリアルタイムに検知するシステムで、今年9月から来年3月にかけて、鉄道関連製品販売のヤシマキザイさん、NTT コミュニケーションズさんと連携して、関東鉄道さんの関東鉄道常総線の守谷駅~新守谷駅間(茨城県守谷市)で取り組んでいます。

 踏切事故は、鉄道運転事故の4割を占め、2021 年度は 217 件発生しています。今の踏切支障検知装置は自動車など大きな物体は高精度で検知できますが、自転車、ベビーカー、車椅子、手押し車など小さな物体の検知精度の向上が課題でした。実証実験で有効性が確認できたら、鉄道各社に導入の提案を行う計画です。

社歴93年、なぜコシダテックは強いのか?現在の事業、将来の展望を深掘り
(画像=コシダテック5Gスタジオで体験できる360°VR動画の画像、『Business Journal』より 引用)

――他に取り組んでいる画像解析技術はありますか。

越田 工場内に設置されている電気やガスなどさまざまなメーターの数字をカメラで把握して、AIで処理してデジタルデータで管理するシステムの開発を進めています。実証実験も進めています。通常、従業員が1日に何度もメーターを回ってチェックしていますが、この作業をデジタル化するシステムです。

――従業員の業務が効率化して、生産性も上がることが期待できるわけですね。

越田 おっしゃる通りです。従業員はメーターのチェック専任ではなく、他の業務を担当しながらメーターを回っているので、その時間を省けて本来の業務に集中できるようになります。いくつかの指標を設定して効率化の測定にも取り組んでいます。