「エイスシーオイスター2.0」の開発を目指したきっかけは「ノロウィルスの流行」

 これまでの常識を覆した「エイスシーオイスター2.0」は、どのような経緯で開発されたのだろうか。

「弊社のグループでは2000年創業以降、全国でオイスターバーを展開しています(2023年10月現在、24店舗)。2006年末に国内でノロウィルスが流行した際、2枚貝が原因だとの風評被害が起こって売り上げが激減してしまいました。それまでは産地直送で各店舗に牡蠣を輸送していたのですが、牡蠣の浄化センターを設け、そこで牡蠣の体内を清浄性の高い海洋深層水で浄化処理を行ってから発送するように変更しました。その結果、厚生労働省の衛生基準を下回る牡蠣の出荷が可能になりました。ただノロウィルスに関しては、浄化処理だけでは完全に取り除くことができません。

 そこで、養殖の最初の段階から人間に害を与える細菌・ウイルスがいない海洋深層水で育てる陸上養殖にたどり着きました。国内外では牡蠣の種苗採取、大きさが数ミリ程度になるまでは陸上で育てられることもありますが、その後は、海水の中で育てられます。食べられる大きさになるまで陸上で育てる方式を実現したのは世界初です。

 また、ここ数年で海の酸性化が進んでいるとの報告があります。この酸性化によって、牡蠣の成育に問題が出る可能性が指摘されています。陸上養殖は、この環境問題や食糧危機問題にも対応できるため、安全性以外にも重要性を感じています」(同)