使い所に注意したい交渉術に使われるテクニック
交渉術の中には、相手の心を揺さぶって要望を受け入れさせるテクニックもあります。あまり積極的に利用したい方法ではないですが、交渉相手が使ってくる可能性を考えて知っておくと、相手のペースに巻き込まれることを避けられます。
ダブル・バインド
「ダブル・バインド」は、相手に2つの矛盾したメッセージを与えることです。日本語では二重拘束と呼ばれ、メッセージを与えられた側は心理的なストレスを感じたり、混乱したりします。
ダブル・バインドには、肯定的ダブル・バインドと否定的ダブル・バインドの2種類があり、交渉術ではこのうち肯定的ダブル・バインドが活用できるとされています。
肯定的ダブル・バインドの使い方は、具体的な選択肢を2つ出すことです。例えば「白と黒、どちらの製品を購入しますか?」と質問を出すと、質問された側はどちらかを選ばなければいけません。
肯定的とはいえ相手にある程度のストレスを与える方法には他ならないので、あまり積極的に利用しないように注意してください。
ゲームズマンシップ
「ゲームズマンシップ」は、相手の判断能力を奪って有利に交渉を進める場合に使われるテクニックです。
相手がイライラしたり、自信がなくなったりするような言動や態度で、交渉に圧力をかけます。穏やかな態度から高圧的な態度に切り替えるなど、相手に揺さぶりをかけるのが特徴です。
交渉を有利に進めるテクニックとして使えるかもしれませんが、相手とのWin-Winな関係の構築はできません。知識として知っておく程度にとどめましょう。
グッドガイ・バッドガイ
「グッドガイ・バッドガイ」は、2人組みで交渉する際に使えるテクニックです。相手の心を揺さぶることで交渉を有利に進めます。
グッドガイ・バッドガイは、1人が相手に厳しくし、もう1人が相手に優しく接します。厳しさを見せる人物をなだめるような形で仲裁に入りつつ、交渉相手に穏やかに接することで、相手に要求を受け入れさせる方法です。
犯人に自白を求めたり、罪を認めさせたりするようなシーンで使われるのは良いかもしれませんが、ビジネスシーンには不向きです。知っておくにとどめて実際の交渉時に使うことは避けたほうが賢明です。
ビジネスでの交渉時に役立つおすすめの本
闇雲に交渉しても相手を納得させ、良い結論を導くことはできません。交渉に臨む前は必ず準備として交渉の原理原則や、交渉パターンを学んでおきましょう。ベストセラーになった名著から、交渉のプロが書いた書籍まで、ビジネスでの交渉時に役立つおすすめの本をご紹介します。
本物の交渉術 あなたのビジネスを動かす「パワー・ネゴシエーション」
『本物の交渉術 あなたのビジネスを動かす「パワー・ネゴシエーション」』は、交渉術に関するセミナーや研修で講師を勤めるロジャー・ドーソン氏が執筆した、ビジネスでの交渉時に役立つおすすめの本です。全米でベストセラーになり、それ以来25年以上読み継がれている交渉術の名著の邦訳です。
交渉の原理原則が学べる他、交渉術の応用の仕方もわかりやすく解説されています。日本国内だけでなく外国の方と交渉する方法も書かれているので、仕事で国外とのやりとりが多い方におすすめです。
交渉時のスタンスから技術、1人のビジネスパーソンとして相手とどんなやりとりを行うか、交渉術以外に社会人としての学びも多い1冊です。
ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる!
『ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる!』はタイトルの通り「ハーバード流」の交渉術について書かれた、ビジネスでの交渉時に役立つおすすめの本です。全世界で30年以上読み継がれてきた名著で、原著は200万部を超えるベストセラー。本書はその新装・新訳版です。
ハーバード大学交渉学研究所で開発された「交渉学」について書かれています。ソフト型やハード型など従来の交渉術ではなく、ハーバード流の交渉術を学べるのが本書の特徴です。
複雑な利害がある場合、相手を立てながら自分の要求を通したい場合、理屈が通じない場合など、交渉時に考え得るさまざまなシーンに対応できる交渉術とは何か。交渉術の本質を知りたい方におすすめの1冊です。
ハーバード×MIT流 世界最強の交渉術---信頼関係を壊さずに最大の成果を得る6原則
『ハーバード×MIT流 世界最強の交渉術---信頼関係を壊さずに最大の成果を得る6原則』は、先に紹介した『ハーバード流交渉術 必ず「望む結果」を引き出せる!』を超える次世代の交渉術が学べるおすすめの本です。Win-Winの関係を目指すハーバード流交渉術の問題点に対応し、複雑な交渉事情にも使える技術が6章にわたって解説されています。
個人ですぐに使える交渉術だけでなく、組織の交渉術を高める方法についても知ることができるのが本書の特徴。現代の複雑な事情に適合し、両者にとって最良の結果を引き出すための交渉術が身に付くおすすめの1冊です。
7タイプ別交渉術
『7タイプ別交渉術』は交渉相手の性格を7タイプに分け、タイプごとに有効な交渉術を解説したビジネスでの交渉時に役立つおすすめの本です。著者は、みらい総合法律事務所の代表パートナーである谷原誠氏。本書の最後には弁護士の交渉術も掲載されており、すぐに実践できるのが特徴です。
本書によれば、人の価値観は損得・成功追求・快楽追求・平和主義・ロジカル・勝敗・人助けの7種類に分けられるといいます。相手が7つのうちどのタイプに当てはまるのかを見極めることが、交渉を成功に導く第一歩。あとは7タイプごとに納得しやすいポイントを把握して交渉するだけです。
相手を性格で分けて説得を試みようと促す異色の交渉術。難しいことは考えず、まずは基本的な交渉術を身につけたい方におすすめの1冊です。
逆転交渉術 まずは「ノー」を引き出せ
24年にわたってFBIの交渉人として事件を解決に導いてきたクリス・ヴォス氏の極秘テクニックが書かれた、ビジネスでの交渉時に役立つおすすめの本『逆転交渉術 まずは「ノー」を引き出せ』。本書で提案されているのは、あえて相手に「ノー」と言わせ、最終的に「イエス」を引き出すための交渉術です。
著者が交渉人として携わった事件のことを交えて構成されており、テクニックを使用する流れを把握できるのが本書の特徴。相手が本当に要求したいものを理解することが交渉成功につながるとして、交渉を行うことが大切だと書かれています。
あえて「ノー」と言わせると、相手に自分が主導権を握っていると錯覚させることができます。その上で、こちらが求めるゴールに向けて相手を誘導させます。ポイントは、両者の間で“相手への理解”を基点とした関係性を構築することです。
会社間の大きなやりとりで活かせる交渉術を学べるおすすめの1冊です。