経済成長率を押し下げる原油高

 続いて、より現実的な経済全体への影響について、内閣府「短期日本経済マクロ計量モデル(2022年版)」の乗数を用いて試算すれば、為替不変の下で今年度後半以降の原油先物価格が平均80ドル/バレル程度で推移すれば、24年と25年の経済成長率をそれぞれ▲0.03%pt、▲0.01%pt程度押し下げるにとどまる。しかし、今後の原油先物価格が90ドル/バレルもしくは100ドル/バレル程度で推移したとすれば、24年と25年の経済成長率をそれぞれ▲0.08%pt・▲0.03%pt、▲0.14%pt、▲0.05%pt程度も押し下げることになる。このように、原油価格の上昇はマクロ経済的に見ても、無視できない悪影響を及ぼす可能性がある。

原油価格上昇、消費税率プラス2ポイント引き上げ以上の負担増の可能性
(画像=『Business Journal』より 引用)

 また、原油価格と我が国の交易利得(損失)には強い相関がある。なお、交易利得(損失)とは、一国の財貨と他国の財貨との数量的交換比率である交易条件が変化することによって生じる貿易の利得もしくは損失のことであり、輸出入価格の変化によって生じる国内と海外における所得の流出入の損失を示す。

原油価格上昇、消費税率プラス2ポイント引き上げ以上の負担増の可能性
(画像=『Business Journal』より 引用)

 そして、この関係に基づけば、円建て原油先物価格が+1000円/バレル上がると年換算で約2.2兆円の所得の国外流出が生じることになる。そこで、この関係から今年度後半以降の原油先物価格が平均80ドル/バレル程度で落ち着くと仮定すれば、24年の所得流出は前年比▲1.1兆円の拡大にとどまる。しかし、今後の原油価格が平均90もしくは100ドル程度で推移すると、24年はそれぞれ同▲3.5兆円、▲6.0兆円も所得の海外流出が拡大することになる。これは、物価高対策なかりせば、原油価格が平均100ドル/バレル台水準で、消費税率+2ポイント引き上げ以上の負担増が生じることを意味する。

原油価格上昇、消費税率プラス2ポイント引き上げ以上の負担増の可能性
(画像=『Business Journal』より 引用)