花巻温泉郷・鉛温泉・藤三旅館(岩手県)

単純温泉・アルカリ性単純高温泉 [website]

藤三旅館

小説家の宮沢賢治氏も愛したとされる風情溢れる佇まいの旅館です。私は、湯治に来る人たちが利用する、とってもレトロな部屋に泊まりました。大衆的でありながらも同時に気品も持ちあわせていて、無性に文庫本を読みたくなりました。

内湯の混浴風呂である「白猿の湯」は、無色透明の足元湧出温泉であり、シャワーも含めて100%源泉かけ流しとのことです。浴槽内のお湯の高さが125cmあるため、立って入浴します。

混浴内風呂「白猿の湯」(藤三旅館公式siteから引用)

このお風呂の造りでビックリするのは、廊下から風呂の入り口の戸を開けると、そこは脱衣所ではなく、既に浴室であることです。入口の目の前に下方に降りて行く石段があり、その石段を降り切ったところに脱衣所と浴槽があるのです。

加えて、湯浴みやタオルの使用は禁止です。宿の方がおっしゃるには、湯浴み・タオルはレジオネラ属菌が繁殖する可能性があるため、強酸性泉のような菌を撃退する湯でない限り、衛生管理上の目的で着用できないとのことでした。

女性にとってハードルが高すぎる「白猿の湯」ですが、心配は御無用です。「白猿の湯」は、時間帯によって1日に3回も女性専用になるので、その時間帯に利用すれば、安心して愉しむことができます。ちなみに、この宿には川の清流を存分に愉しむことができる男女別の露天風呂もあり、それだけでも訪れる価値があると思います。

混浴温泉に対する感想

以上、東北北部の混浴温泉への入浴体験を紹介しました。混浴温泉への入浴は、当初に思っていたほどハードルは高くありませんでした。少なくとも今回訪れた混浴温泉については、いずれも安心して入浴できました。何よりも短期間にいくつもの魅力的な温泉、特に稀少な足元湧出温泉に入浴できたことは貴重な経験となりました。

今回、混浴温泉を利用してみて確信したことは、混浴温泉は、けっして混浴自体が目的ではなく、貴重な温泉資源を男女の垣根を越えてシェアすることが目的であるということです。この分かち合う文化が現在も継承されていることは素晴らしいことであると考えます。

環境省は、古くから守られてきた湯治・混浴文化を将来に渡って守っていくことを目指して[10年後の混浴プロジェクト]という事業を展開しています。混浴の正の側面である「混浴が残ってきた理由」と混浴の負の側面である「混浴が抱える課題」について次のような考察を行っています。

混浴が残ってきた理由

自噴している温泉をそのまま利用 有毒な硫化水素の滞留により仕切不可 湯治における交流の象徴 観光資源としてのシンボリックな浴槽

混浴が抱える課題

裸体をさらすことへの抵抗 異性の性的な視線 異性の裸体に対する嫌悪 女性用風呂の混雑(混浴風呂回避による)

これらのいずれも今回の旅でいちいち実感したことです。「混浴が残ってきた理由」は今後も消えることはないものと考えます。混浴は将来も残ると思います。

一方、「混浴が抱える課題」を解決するにあたっては、男女ともに混浴中に異性に裸体をさらさないでも済む工夫を考案することに尽きると考えます。

このことは、日本文化の保護のため日本人に課せられたちょっぴり重大な問題かと思います(笑)

 

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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