PHEVは通常使用でBEV感覚が味わえるハイパワー仕様
新型は、PHEVの注目度が高まっている。PHEVを簡単に表現すると、バッテリーをたくさん積んで外部から充電できるようにしたプリウスのハイパワー仕様ということになる。
これまでにもPHEVは設定されていたが、販売は芳しくなかった。価格の問題もあったが、HEVで十分と感じた人が多かったため、PHEVに目が向かなかったに違いない。旧型は内外装デザインを変えて、プリウスの上級版であることをアピールしていたが、状況はそれほど変わらなかった。
新型では、デザインではなくクルマの本質、「性能」の違いを打ち出した。大いに共感を覚える。
PHEVは、2リッターエンジンとモーターで構成する。HEV比で約5割増しの高出力モーターと、従来型PHEVより、こちらも約5割増の大容量バッテリーを搭載している。満充電時のEV走行距離は大幅に延長。従来型の約60kmに対し、新型は19インチ車で87km、17インチ車は105kmまで伸びた。
新型プリウスは、HEVでも旧型とは比べものにならないほどリニアで瞬発力があるが、PHEVはスポーティカー感覚。市街地でのストップ&ゴーもさることながら、高速道路の再加速のように、もっと高い車速域でハイパワーのメリットを感じる。0→100km/h加速6.7秒のパフォーマンスは伊達ではない。
PHEVの大きなアドバンテージは、チャージモード以外ではエンジンがかかる頻度が圧倒的に少ないことと、静粛性に優れることだ。HEVはけっこう頻繁にエンジンが始動し、タイヤや風切り音など車外の音が聞こえる。対してPHEVは通常走行時は、まるでBEVのイメージ。静粛なドライブが楽しめる。
フットワークの仕上がりもなかなかのレベルだ。ドライバーズカーと表現できるほどドライバビリティは高い。新世代のTNGAの実力の高さと、それをもとに巧みにチューニングされていることがうかがえる。
歴代PHEVがHEVに対してハンドリングで重々しさが感じられたことを思うと、一線を画している。HEVと大差ない感覚で走れるのはうれしい。これまでなかった本来的なドライビングプレジャーの持ち主である。市街地を普通に走っても、ワインディングを攻めても、ファン・トゥ・ドライブを味わえるのが新型プリウスの魅力だ。
乗り心地については、重量増をカバーするために足回りが強化されているPHEVは、HEV以上に「硬さを感じるシチュエーション」がたびたびある。決して不快ではないが、気になるユーザーもいるだろう。
HEVの2WDにもE-Fourにも、それぞれ強みと持ち味はあるが、ひとまず現時点での総合的な実力で、最も完成度が高いプリウスはPHEVだと思う。
通知表/トヨタ・プリウスPHEV 価格/460万円
総合評価/76点
Final Comment
走りとハンドリングに優れた電動車
デザインが生むネガを容認できるかがポイント
使い勝手と快適性能の評価はやや低く、動的性能は高い評価になった。乗降性や視界はあまりよくない。車両感覚もつかみにくい。それはデザインがもたらしたもの。スタイリングは、プリウス最大の魅力であり存在意義。いくら点数が低くくても、オーナーが納得すれば問題はないと思う。走行性能はなかなか優れた評価になった。パフォーマンスは力強く、ハンドリングも気持ちいい。燃費を含めた環境への優しさもさすがだ。プリウスPHEVは、個性明快な電動車である。