トヨタ・プリウスZ・PHEV/価格:THS 460万円 試乗記
5代目は愛される存在としてプリウスを再定義
新型プリウスを頻繁に街で見かけるようになった。造形は新鮮。眺めるたびに、よくぞここまで思い切ったと感心する。新型は、改めて「プリウスの存在価値は何か」を問い直した意欲作である。その回答がスタイリングであり、それにふさわしい走りの性能だった。エコカーからスペシャルティカーへの大変身。国内外でかなり好意的に受け取られている。個人的にも大歓迎だ。
一方で、ここまで割り切ったがゆえに、主に使い勝手に関する問題点が生まれた。この点は、ユーザー自身が「ネガティブな面を補ってあまりある魅力」を感じるなら購入すればいい話だと思っている。新型プリウスは万人に向けたモデルではない。気に入った人に深く愛されることを目指した個性派だ。とはいえ使い勝手は重要なポイント。まずはそのあたりを検証することにしたい。
HEVとPHEVで共通の部分から見ていくと、乗降性については前後席ともよくはない。SUVやミニバンと比較して車高が明確に低く、ピラーがこれだけ寝ているのだから当然だ。とくに長身のユーザーはつらいだろう。
運転席に収まると、左右のフロントピラーの存在感が気になる。さらに、フロントウィンドウがスーパースポーツなみにすごい角度で奥から眼前に迫ってくる。独特の雰囲気であることは確かだ。気になったのはハイマウント式メーターの視認性。ドライビングポジションを決めると、ステアリングホイールに隠れて重要な部分が見えない。ドライバーによって異なるだろうが、もう少し工夫が必要だろう。
後席の居住性は、思った以上にいい。乗り込むのは少し面倒だが、広さは十分。シートの高さとバックレスト角度は成人男性が座っても問題のない作りになっている。前席下への足入れ性も確保されている。前席が大ぶりのため、やや閉塞感があるが、パッケージングは悪くない。ただし、後席用エアコン送風口はほしい。
駆動用バッテリーの配置も工夫され、PHEVだから車内が狭い、という点はなさそうだ。ラゲッジルーム床面だけはHEVに対して少し高いが、実用上は大差ない。