迫力のテールツーノーズ
井口はコース上6番手だが、実質4位で走行を続ける。この時点で優勝争いは上位4、5台に絞られ、BRZ GT300が前を走るマシンをコース上で抜くしかなくなってくる。しかしこの頃路面温度は19度まで下がっている。ダンロップタイヤの対応温度を下回りはじめているのだ。

コーナリングが厳しくなるのはもちろん、やはりブレーキング勝負ができなくなるのが厳しい。グリップ力が落ち、突っ込み勝負ができず井口は苦しくなっていく。それでも3位を走る#31には近づく。そう、#31はタイヤ無交換作戦のマシンだから仕留めたい相手だ。60周を終えた時点で#31とは10秒63離れていたが、69周目には0.176秒のテールツーノーズに追い詰めた。
お互いタイヤが厳しい状況での3位争いが繰り広げられ、車間距離が1mから5mという展開が10周以上続き、井口はプッシュを続ける。必死に逃げる#31。そして90周目のファイナルラップ、#31とは0.679秒差。実に23周もテールツーノーズで走り、お互いメンタルも含めた消耗戦をとなっていたが、井口は最後まで#31を交わすことができず4位でチェッカーを受けた。

ピットで待つ山内は顔面蒼白。BRZ GT300には優勝しか残されていない状況で、完敗を喫したのだ。
優勝は今季2回目の#52。2位はポールシッターの#2で、3位#31となり、ブリヂストンの1-2-3という結果になった。
ピットに戻る井口はうな垂れ、チームスタッフに申し訳ないと頭を下げ続ける。重たい空気がピット内を襲い、逆転チャンピオンの可能性は消えた。「最終戦をまたずにチャンピオン争いから脱落するのは耐え難いほど悔しい。何が足りないのか」と山内は涙する。

小澤総監督も「戦略も含め今持っている武器では勝てなかった」と。今回のレースはブリヂストン勢の完勝。BRZ GT300は数々のハンデキャップを克服しながらレースに挑み、何度となくクリティカルポイントを超える戦いを演じてきたが、今回だけはドラマチックな走りはできなかったというレースだった。
提供・AUTO PROVE
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