巨人オグの伝説

画像は「Getty Images」より(画像=『TOCANA』より 引用)
このようにノアとウトナピシュティム、アダムとアダパは、文献学的にシュメール神話・古代バビロニアと聖書をつなぐ存在である。
一方、キリスト教とイスラム教をつなぐ伝承もある。それが巨人伝説だ。たとえば、聖書に出てくるダビデとゴリアテの話は有名だ。他にもオグという巨人が出てくる。ユダヤ・キリスト教の伝承では、オグの身長1.8mから最大4mとなっている。たしかに身長180cmは古代人としては、破格の背の高さだ。
しかし、この伝承を継承したイスラム神話においてオグは、じつに身長18kmの巨人として現れる。日本でも神話学の碩学・松村武雄が、この話を1928年『神話伝説体系:ヘブライ・パレスチン神話と伝説』で紹介している。
この巨人オグは、アダムの娘アナクの息子である。娘アナクも中々の見た目だったらしく、頭が二つあり、両手の指は20本を数え、指ごとに長い鉤爪が2本ずつ生えていたとされる。伝承では「悪」それ自体、その象徴として考えられており、神が殺した最初の人物とされる。
そしてアナクの息子オグはさらに凄かった。高い山脈を沈めたノアの洪水でさえ、巨人オグにとっては踝を湿らせる程度だった。その巨大さは、サイが突進しても蚊に刺されたようにしか感じなかったという。では、そのオグはどんな最期を迎えたか。
洪水の最中、ノアを方舟ごと沈めようと暴れるも失敗したオグは、後に数百年を生きて、最後はモーセによって倒される。山脈を引き抜いて、モーセ率いるイスラエル軍を陣営ごと圧殺しようとしたオグに対し、モーセが罠を張った。結果オグは自分の持っていた山脈を頭に落として絶命する。身長18㎞の巨人の最期だった。