アダムとアダパ
ではアダパは、どんな人物なのか。興味深いことに、アダパは「神聖なる魚」として半身半魚の人物として描かれる。シュメール神話によれば、人間に工芸や文明をもたらすため、エリドゥの高位神エアにより、アプス神殿から七賢人アプカルルが派遣された。七賢人の筆頭がアダパである。
「エリドゥ」は洪水以前に建設された五つの都市国家の一つだ。一説では、ここに「バベルの塔」があった。また「アプカルル」は神殿の聖職者たちだ。つまり、これらの神話は事実そのままではないにせよ、考古学的・歴史的事実を何かしら反映している。
アダパは、神と人をつなぐ半魚人であり漁師でもある。なぜ漁師が半魚人なのか。今となっては判らない。もしかすると収穫をもたらす知恵のある者、水の神と人の間に立つ存在という意味で、半魚人で漁師なのかもしれない。イエス・キリストの最初の弟子が漁師であることを思い出させるし、後代にキリスト教徒が魚を信仰の象徴としたことを連想させる。