2日に行われた、創業者のジャニー喜多川元社長の問題をめぐるジャニーズ事務所の会見で、質問の指名対象から除外する記者を記した「NG記者リスト」が作成されていた問題。同事務所は7日、会見の運営を委託されていた外資系PR会社が同事務所の指示により当該リストを作成したとする一部メディア報道を否定するコメントを発表。また、会見に欠席した藤島ジュリー景子前社長が当日、会見会場にいたという報道も否定した。当該リストをめぐっては、PR会社が「配慮に基づく進行を行うことはジャニーズ事務所側も了承していた」「会見の進め方について同事務所と調整していた」としており(5日付「読売新聞」記事より)、同事務所がどこまで会見の運営内容を事前に把握していたのかが焦点となっていたが、当該リスト作成への関与については改めて否定した格好となった。

 事の発端となったのは、NHKのスクープだった。5日、会見で質問の指名対象から除外する記者を記したリストが作成されていたとNHKが報道。会見会場でリストを持つPR会社スタッフの映像も報じられたが、ジャニーズ事務所はメディア各社の取材に対し、

「会見前々日の会議で、本件について打ち合わせが行われた際、媒体リストを持ってこられて、そこにNGと書いてあったので井ノ原が、『これどういう意味ですか?絶対当てないとダメですよ』と言いました。するとPR会社が、では前半ではなく後半で当てるようにします。と答えました」(5日付サンケイスポーツ記事より)

「今回流出した資料は、弊社の関係者は誰も関与しておりません。見てもおりません」(同)

「この外資系PR会社にこのことを謝罪してほしいとお願いしましたが、外資なので本国の許可が必要で調整に時間がかかると言われました」(同)

と回答。さらに同事務所は5日、公式サイト上で声明を発表したのだが、先行してメディア各社の取材に対し出していた回答に書かれていた「PR会社が、では前半ではなく後半で当てるようにします。と答えました」との文言が「では当てるようにします。と答えました。」と変更され、「では前半ではなく後半で」との記述が削除されているほか、「(編集部追記:当該リストを)私たちは誰も見ておりません」との記述も削除されていることがわかり、さまざまな憶測を呼んでいた。

「全くの事実無根です」

 そんななか飛び出したのが、6日付「FRIDAY DIGITAL」報道だ。「FRIDAY」は、当該リストはジャニーズ事務所の要望に基づいて外資系PR会社・FTIコンサルティングが作成したと伝えた。さらに、20代からパニック障害があり過呼吸で倒れてしまう恐れがあるとの理由で会見を欠席したジュリー氏について、当日会見会場にいたとも伝えた。

 この報道に対しジャニーズ事務所はすかさず反応。7日、公式サイト上に声明を発表し、

「ジュリー氏も会場にいたなどとする部分については全くの事実無根です」

「いわゆる『NGリスト』なるものが弊社の要望に基づいて作成されたなどとする部分について、会見を委託したコンサルティング会社を選任し、運営について直接やりとりをしていただいていた弊社顧問弁護士にも改めて確認しましたが、顧問弁護士らも上記のような要望や意見を行った事実は一切ないとのことでした」

と否定した。広告代理店関係者はいう。

「PR会社が会見を円滑に進める目的でNG記者リストやNG媒体リストを作成するのは珍しいことではないが、今回の会見で一番まずかったのは、作成していた事実が世間にバレてしまったという点だ。顔写真入りのリストまで作成して、それを報道陣から丸見えの状態で会見場に持ち込んだり、会場で複数のスタッフが持っていたというのは、あり得ないレベルのミス。結果として自らの失態で大騒動を引き起こしクライアントであるジャニーズ事務所に迷惑をかけているのだから、PR会社としては完全に失格だ」

 別の広告代理店関係者はいう。

「FTIはPR会社としては中堅どころ。会社のHPをみると、本業はM&Aやリスクマネジメントなどに関する経営コンサル業務がメインの模様だが、今回のような失態をおかした会社にPR業務や経営コンサルを依頼しようと考える企業はいない。『FRIDAY』記事には運営にかかわったスタッフの証言が多数出てくるが、FTIとしては今後のビジネスへの影響を最小限に食い止めるためにも、あくまで同事務所の同意の上でやっていたという流れをつくるのに躍起になっているのでは。

 ただ、会見やジャニーズ事務所が出しているコメントを見る限り、同事務所が嘘をついているとは感じられず、この期に及んで事務所が『一部の記者を当てない』という行為をするとも考えにくい。のちにそれがバレたり、もしくは疑いを持たれることのリスクのほうが大きいからだ」

 ちなみに会見で司会を担当した元NHKアナウンサーの松本和也氏は、プレスリリース配信サービス会社を通じ、当該リストは会見前にFTIより渡され会見中も松本氏の手元にあったものの、「会見2日前の打ち合わせのときに、この記者は指名NGというやりかたはよくないという旨の井ノ原さんたちの発言を直接聞いていた」(プレスリリースより)ため、リストには従わないかたちで記者の指名を行っていたと説明している。