クラシカルなボディに搭載された最新メカニズム

クラシカルなルックスながら最新メカニズムも搭載。6速ミッションには急なシフトダウンのときにリヤホイールがロックすることを抑制するアンチホッピングクラッチを装備。ブレーキのロックを防止するABSシステムはもちろん、解除することも可能なトラクションコントロールシステムも備えている。しかしリヤタイヤのグリップ力を容易に失わせる事が可能な強大なトルクのことを考えると、ボクにはトラクションコントロールを解除するシーンが思いつかなかった。
また高速道路などで役立つクルーズコントロールシステムも搭載。クロムウェル1200の高い直進安定性を存分に活かして長時間移動する際にライダーの疲労を抑える効果がある。ありがたいシステムなのだが、せっかくなら設定した速度を1kmずつ上下できるボタンも装備してくれると、より使い勝手が向上するのではないかと感じた。

撮影協力:UNITEDCafe  ()

新時代に輝くモダンクラシックモデル

他のメーカーにも大排気量の並列2気筒エンジンを搭載したクラシックモデルは存在する。多くのそれらとクロムウェル1200の大きな違いは“過去に縛られていない”ということ。KSRグループは、現代のデザイン力と技術力で理想とするモダンクラシックモデルをゼロから創造しているのである。そのため無駄のないボディラインや、並列2気筒エンジン独自の鼓動感や雑味がないパワーフィールを純粋に楽しめるパワーユニットを生み出すことができたのであろう。

フラットな目で見て、クロムウェル1200の完成度はかなり高い。ブリクストンの大排気量モダンクラシックの歴史はここからはじまると感じさせるに十分すぎる仕上がりである。
クラシックバイク好きはもちろん、大排気量並列2気筒エンジンの魅力を体感したことがない人に、ぜひ一度乗ってもらいたい。
きっと見る目が変わるに違いない1台だ。

ディテール解説

LEDヘッドライトは内部にBRIXTONのロゴが入っている。ウインカーはカスタムモデルのように小型だが、照度が高いので視認性は良い。
ヘッドライトとウインカーを保持するだけのヘッドライトステーの造形にここまで凝っているバイクも珍しい。細部まで手を抜いていないのがBRIXTON流だといえよう。そして、こういう所がユーザーの満足度を高めるのだ。
今どきのバイクらしく、剛性が高いテーパーバーハンドルを採用。幅は広すぎず高さも適正。シンプルな丸形のデジタルメーターが配置されている。
クラシカルなイメージの樽型グリップを装備。左のハンドルスイッチボックスには、ウインカー/ホーン/ハザードのほかモード切り替えボタンとクルーズコントロールのスイッチを備えている。
右のスイッチボックスにはキルスイッチと連動したセルボタンと、ヘッドライト/ポジションの切り替えボタン、そしてトラクションコントロールの解除ボタンが配置されている。ブレーキ/クラッチレバーは距離の調整が可能。
十分な剛性感を持つKYB製正立フォークにアキシャルマウント式のNISSIN製片押し2ポットキャリパーをダブルで装備。フォークは調整式だ。ディスクローター径は310mm。タッチや効きは良好。オーソドックスなパーツ構成に好感が持てる。
柔らかいラインとエッジが絶妙に組み合わされた造形を持つガソリンタンク。ニーグリップパッドがクラシカルなイメージ。
ロックを解除すると外れるタンクキャップは重量感がある仕上がり。これもクラシカルな雰囲気を盛り上げるための演出であろう。キーロックのカチッとした動きに高い精度を感じる。
ボタンを押すとブレードが飛び出す、折りたたみナイフのようなギミックを持つキーもシャレている。
クロムウェル1200のために造られた並列2気筒エンジンは1222cc。4バルブSOHCというオーソドックスな構成だが、アンチホッピングクラッチなど最新の装備も導入されている。
排気音以外のメカニカルノイズは極めて少なく、高い技術で生産されていることを感じさせる。クオリティの高さもブリクストンの特徴だ。
左右2本出しのマフラーはオールステンレス製。ここから腹に響くような図太いエキゾーストノートが響く。
前後の段差が少ないダブルシートを採用。座り心地は良く疲れにくい。
短いリヤフェンダーの上に乗るテールランプもLED。シンプルなリヤビューだ。
メッキ仕上げのKYB製アジャスタブル機能付きツインショックは動きがよく、路面からの衝撃を効率よく緩和。加速時にはトラクションがしっかりと掛かるのが感じ取れる。
ステップバーには振動を吸収するゴムラバーを装備。タンデムステップのステーも凝った形状のパイプで構成されている。
往年のイギリス車などを彷彿させる右チェーン/左ブレーキを採用。こういうところからも異国情緒が感じられる。