モードによって異なるパワーフィーリング

クロムウェル1200には2つのパワーモードがある。ひとつはエコモード。アクセル操作に対して従順にエンジンパワーが湧き出てくるモードだ。ただ“エコモード”という言葉を安易に信じてはいけない。アクセルを開けると1222cc並列2気筒エンジンが生み出す図太いトルクによって一気に押し出されていくのだから。低回転域からストレスなく吹け上がっていくが、とにかくトルクが太いため速度がグングン上がっていく。街中でレッドゾーンまで回すことは、そうそうできないだろう。それくらい強い加速力を見せるのだ。
しかし驚きはここで終わりではなかった。
左ハンドルスイッチにあるモードボタンを5秒ほど長押しすると、メーターのデザインが

スピードメーターが大きく表示されている“エコモード”から

タコメーターがメインとなる“スポーツモード”に切り替わる。

するとエンジンのキャラクターが激変!
アクセルを開けるやいなや、エコモードを上回るレスポンスで、さらに強力なトルクが怒涛のように生まれるではないか!油断するとハンドルから手が離れそうになるほどのダッシュをみせる。
「これが270度クランクを持つ大排気量並列2気筒エンジン本来のパフォーマンスか!」思わずそんな考えが脳裏をよぎる。そのときステンレス製の2本出しマフラーから吐き出されるサウンドは雑味がなくクリア。回転の上昇とともにライダーの気持ちを高揚させてくれる響きだ。そういうところからもエンジン自体が質の高いプロダクトだということが伝わってくる。近年の厳しい排ガス規制や音量規制下でこんなエンジンを創り出した技術者には敬意を評したい。
最新技術で造られた並列2気筒エンジンの本当の魅力を知りたい人に体験してもらいたいと感じるフィーリングだ。

自然で独自性がある操縦特性

ハンドリングは重量車らしいニュートラルなもの。フロントが18インチと17インチのリヤよりもワンサイズ大きいが、変なクセはなく自然とバンクしていく。無理にクラシカルな味付けをしていないところもよい。
ステップの位置が低めなのでバンク角はそれほど深くない。回り込むようなコーナーではステップのバンクセンサーが接地してしまうことも。強力なトルクによってペースが上がって行き、もう少し寝かせたいと感じるシーンでアレッと感じることもあったが、基本的に攻めるバイクではないので設定は間違っていない。ただ想像以上に走りのポテンシャルが高いため、ついその気になってしまうのは否めない。とはいえ浅いバンク角にあわせてコーナーリングスピードを抑えても、強大なトルクを活かした立ち上がり加速で一気に前車に追いつくことが可能だ。
クロムウェル1200の特性にあった乗り方を模索するのも楽しくなってくる。