フタを開ければホンダ始まって以来の大ヒット!
ホンダといえば、1960年代としては驚異的なDOHCエンジンで四輪車へ参入、軽トラT360に続く一連の「S」シリーズや、第1次軽自動車パワーウォーズの火付け役となったN360、そして日本勢で初参戦となったF1で、四輪でもスポーツイメージが強かったものです。
一方、ライフステップバンやバモスホンダといった遊び心の強いクルマも販売したものの、当時はコンセプトが理解されず低迷しており、スポーツイメージの薄い車種には二の足を踏んでいたようで、初代オデッセイの販売も当初は全く期待されていませんでした。
ところが…ユーザーの方はミニバンは欲しいものの、商用1BOXベース車や商用グレードが存在する「安っぽいクルマの運転手」になることは望んでおらず、そこに現れた「あのホンダが作ったミニバン」オデッセイは、まさに天の救い!
発売されるや殺到する注文に慌てたホンダは急ぎ生産ラインを拡張、作れば飛ぶように売れる勢いはN360や初代シビック以来…否、それ以上の勢いでホンダ史上空前の大ヒット作となりました。
おかげで新型SUVの初代CR-V(1995年)、ホンダ初のハイルーフミニバンである初代ステップワゴン(1996年)の販売にも弾みがついてどちらもヒットし、1998年にF1へ復帰(第3期)した時など、「RVで儲けた金でF1」と言われたものです。
ホンダ初の「成功した高級車」
さらにホンダとしては、単にミニバンで成功したクルマ…に留まりません。
アコードをベースに背の低い3列シートミニバン化したボディは、スポーティなだけでなくエレガント、高級感がありましたし、パワースライドドアなどない当時、商用1BOXのように開閉でガラガラ言わない通常のヒンジドアは、むしろプレミアム感がありました。
当初のエンジンラインナップはただの2.2リッター直4SOHCでしたが、やがて2.3リッター 直4SOHC VTEC、そしてついに3リッターV6SOHCを積む「プレステージ」が投入されると、高級ミニバンとしても成功を収めます。
ホンダの高級車といえば、レジェンド(初代1985年)、インスパイア(同1989年)があったものの、それぞれトヨタでいえばクラウン、マークIIといった同クラスライバルには全く対抗できておらず、それもホンダ四輪にとって不振の一因でした。
それらの高級車(そして海外向け高級車ブランド「アキュラ」)用に開発されたV6エンジンを積んだ初代オデッセイ プレステージの成功は、同時に「ホンダで初めて成功した高級車」も意味したのです。
保守的な価値観が重視されるセダンでは無理でも、そうしたしがらみに囚われない新ジャンルである「ミニバン」なら、ホンダでも高級車として十分に認められました。