ICT教材が“子どもたちの人生を変える”。学びの多様化へ

--褒められれば、本人の自信にもつながりますね。

松本:そうなんです。「今週毎日ログインしたの?すごいじゃん!」っていうところから褒められると、やる気スイッチが入って、自分でもできるかも、とか今まで勉強のやり方が合ってなかったんだっていうふうにマインドセットできるんですよね。

子どもたちの成績、さらに自己肯定感がどんどん上がっていくのを実際に目の当たりにして、私は自信をもって「これはいける!」と思いましたし、もっと多くの子どもたちに「すらら」を使ってほしい、広げたい、と思いました。

--ICT教材の導入後、保護者の反応はどうでしたか?

松本:子どもに対して怒ってばかりだったお母さんに、お子さん凄いですよ!って「すらら」のログやデータを見せながら伝えると、“たしかに”って納得されるんです。それを機に、保護者と子どもの関係が良好になると、勉強だけじゃなくて部活も頑張ろうとか、将来に夢をもてるようになるんです。

当時、当社の塾に通っていた勉強が苦手だった生徒の1人が、のちに海外留学をするという報告をしに会社へ来てくれたことがあって、英語でスピーチしてくれたときにはもう感動しましたね。「すらら」での学習を通じて自分の夢を見つけ、それに向かっている姿が嬉しくて、今でも鮮明に覚えています。

--ICT教材の広がりは、子どもたちの生き方に影響を与えそうですね。

松本:はい。我々がやりたいことは、表面的に学習をこなすとか、学習をDX化するとかそういうことではなくて、本当に“子どもたちの人生を変える”くらいのことなんです。

たとえば今、不登校の子どもがすごく多くて、少子化なのにフリースクールや通信制高校の市場は伸びている。最近ではそういった教育現場でも、学校に復帰することをゴールにするのではなくて、“どこかで社会との接点をもとう”というようなことが取り組まれています。

つまり、いろんな特性や個性をもつ子どもたちが、一律でみんなが同じ学校へ行って、同じことを学ぶのが当たり前、みたいなところがもうなくなってきているのが現状なのです。

学校だけでなく、さまざまな教育シーンでICT教材が活用されることで、本当の意味での「学びの多様化」を支えるものであると考えています。

(後編に続く)

後編では、なぜICT教材が十分に活用されない教育現場があるのか、現場ではどういった課題が挙がっているのかなどを踏まえながら、実際の教育現場においてICT教材を上手に活用する手法や、子どもたちとの向き合い方についてお話を伺います。

<インタビュイープロフィール>

松本 梢(まつもと こずえ)
執行役員/マーケティンググループ長 大分県生まれ

地元大分県で大学生時代から個人家庭教師のアルバイトを始めたことから教育業界への道に入る。(株)すららネットの前身の会社である、ベンチャー・リンク(東証一部上場)に2007年入社。ICT教材「すらら」で教える初のモデル校兼実証実験校「次世代型学習塾」の塾長として塾経営と学習指導の両方を担う。2010年MBOで独立後、学校部門の責任者として週7日のうち5日は地方出張するなど、営業活動に従事。2016年から塾部門の責任者となり2017年の東証マザーズ(現.東証グロース)上場に貢献。2018年執行役員就任、2021年よりマーケティンググループ統括を兼任する。現場の先生の状況や課題を把握し、人の力が最大限に発揮される『AI教材×人』のベストミックスについて、それぞれの現場にフィットした活用提案をし続ける。1女の母。