東大や難関私立も難化していない
上位層が受験する東京大学や早慶上智など、難関私立大学の英語試験についても変化がみられるのだろうか。
「東大の英語試験については、大手予備校による近年の難易度判定を確認しても、例年並みという判断が続いています。私自身も特に難化したという印象はありません。東大の英語試験には明確な方針があります。それは『あてはめ式で解ける問題は出さない』ということ。習得した知識を組み合わせたり変形したりと、自分なりに使いこなして問題を解く『基礎力』を見ています」
その一例として、昨年の東大入試では性同一性障害を題材とする文章が出題された。ポイントを押さえれば済む説明文ではなく、読み進めるうちに要所や主題を把握できる読み物であり、性質としては変化後の共通テストと軌を一にするものだ。高校の教材では、このような「エッジの利いた」題材が使われることはない。東大の受験生ならば、毒にも薬にもならないような文章でなく、より現実や新しい価値観に即した題材でも思考力を発揮してほしいという意図が込められた作問だと富田氏は言う。
「上位私大では、学校の特色を出すために試験が変化している面はあるでしょう。近年話題になっている早稲田大学の政治経済学部でいえば、数学を必須科目にしたり、英語も小手先では解けない問題に変わってきています。明らかに受験生が嫌がる方向に変えているのですが、本格派の学生を集めたいという大学の意向が試験問題に反映されているわけです」