業績不振を招いた複合要因
では、なぜ大量閉店と業績不振に陥ってしまったのか。
「理由としては、コロナ禍やライバル店の出現、原材料費上昇による価格優位性の低下などがありますが、他にも考えられます。
・早急な過剰出店
これは飲食店が失敗するよくあるケースです。立地の読み間違いもそうですが、『人』の問題も大きいです。出店することに重きを置き、人材が育ってないのに先に箱ができて、そこにとりあえず人を充てるパターンは、サービス業として失敗する可能性が高まります。そして1店舗あたりの利益が少しでも出ているうちはいいのですが、逆に少しの赤字でも多店舗ではトータルで大きな赤字となってしまいます。そうなるとコストがかかる新たな出店や設備投資、メンテナンスなど、成長するために本来必要なものにお金がかけられなくなり悪循環が始まります。
・強すぎる創業社長とSNSの影響力
自画自賛と捉えられかねない文言や『このままではお近くの店を閉めることになります』と、お客さんへの責任転換とも見られかねない文面の店内ポスターを作ったりした創業社長の発言力が強すぎて、周りの人が委縮したり、意見が活かされていなかったことも考えられます。創業社長が強すぎると、周りはイエスマンばかりになってしまい、勇気をもって意見を言う人はいなくなりますし、言われても社長が考えを曲げることができなくなります。うまくいっているときはいいのですが、どこかでつまずく可能性が高まります。そして、マイナスの情報がSNSで拡散され、イメージダウンにつながったり、敵をつくってしまったことも影響していると思います。
・流行り廃り
どうしても流行り廃りというのはあります。流行っているうちは我先にとお客さんは押しかけますが、流行りが落ち着くと、他の流行りを探したり、『あそこはチェーン店だし』とお客さんの利用機会が減ったりします。飲食業界全体の課題でもありますが、ずっと同じものを食べ続けたり、同じお店に同じペースで通い続ける人は少数です。最初のうちは毎週1回来店するかもしれませんが、徐々に来店頻度は落ち、月1回、ワンシーズンに1回のように落ち着いていきます。いかに忘れられないよう、商品開発をしたり、情報発信をしたりしながら定期的に来店してもらうことが、安定的に利益を出しながら商売を長く続けるコツとなります。『いきなり!ステーキ』は、この点で詰めが甘かったように思われます。
ペッパーフードサービスの23年12月期の営業利益は約4億円の赤字予想です。これを『いきなり!ステーキ』だけで解消しようとすると、大雑把な計算で1店舗あたり約200万円の利益を出さなくてはなりません。12カ月で割ると1カ月で約17万円の利益、売上ベースでは1カ月約50万円の売上アップによって赤字解消が見込めます(材料費と人件費であるFLコスト55%+光熱費や消耗品等の変動コスト10%で計算)。この先は海外戦略やインバウンド対策にも力を入れていくでしょうし、商品開発とPRの仕方しだいでは手が届く範囲のような気もします。まさにこの数年が正念場といえるでしょう」
(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)
提供元・Business Journal
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