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要塞の名残を探して
階段で山を下る

要塞の名残を探して

ケーブルカー山頂駅を降りてすぐに、「鐘塔」があります。この塔と時計塔の2つのみが取り壊しを免れましたが、すぐ隣にあった礼拝堂は破壊され、土台だけになっています。

【オーストリア】世界遺産の町グラーツのシンボル「シュロスベルク」山上を散策
(画像=<鐘塔>、『たびこふれ』より引用)

坂をのぼると武器庫として使われていたレンガ造りの建物が見えてきます。屋根は破壊され、壁だけが残っているため、現在は半野外の劇場として使用されていて、夏季の演劇祭等のイベントに使われています。

さらに進むと、グラーツを一望のもとに見渡せる、芝生の公園があります。一角にたたずむツィステルネと呼ばれる地下貯水施設やナポレオン戦争の包囲戦を祈念したライオンの像は、この場所に要塞があり、過去に激戦が繰り広げられた名残を見せています。

【オーストリア】世界遺産の町グラーツのシンボル「シュロスベルク」山上を散策
(画像=<ライオン像>、『たびこふれ』より引用)

この公園の奥まで行くと、ゴシック時代の城門跡が見えてきます。城の取り壊し時に埋められ、1982年に「発見」された中世の巨大な城門で、外観は頑強な城壁の門にしか見えず、城本体が現在存在しないのが不思議なくらいです。

【オーストリア】世界遺産の町グラーツのシンボル「シュロスベルク」山上を散策
(画像=『たびこふれ』より引用)
【オーストリア】世界遺産の町グラーツのシンボル「シュロスベルク」山上を散策
(画像=<ゴシック城門跡>、『たびこふれ』より引用)

ここから元来た道を引き返し、山の反対側にある時計台に向かいます。散歩道の途中にはシュロスベルク博物館があり、更に下ると六角形の井戸が見えます。これが、1553年に作られた、94mの深さのある「トルコ井戸」です。その名の通り、オスマントルコとの戦争で囚われた捕虜が掘ったとされ、実際にナポレオン戦争で城が包囲された時の水源として役立ちました。

【オーストリア】世界遺産の町グラーツのシンボル「シュロスベルク」山上を散策
(画像=<トルコ井戸と博物館>、『たびこふれ』より引用)

その横には、爆薬庫だった建物を使ったワインレストランもあり、グラーツを見下ろしながらワインを楽しむことができます。ここから時計塔を目指して歩く途中にある「中国風パビリオン」も絶景ポイントです。

【オーストリア】世界遺産の町グラーツのシンボル「シュロスベルク」山上を散策
(画像=<山頂からグラーツ市街を見下ろして>、『たびこふれ』より引用)

時計塔は、13世紀には既にこの場所にあり、グラーツの市民に時を伝えていました。高さは28メートルあり、長針と短針が逆についています。町から時計を見上げた時に、分より時間の方が見やすいよう、このように作られたそうです。

【オーストリア】世界遺産の町グラーツのシンボル「シュロスベルク」山上を散策
(画像=<時計塔の針は2:47を指している>、『たびこふれ』より引用)

階段で山を下る

時計塔の足元には、城の取り壊し後に作られた庭園があり、ここから260段の階段で山を下りていきます。この階段は第一次世界大戦中に作られたため、「戦争階段」という名がつけられいます。

【オーストリア】世界遺産の町グラーツのシンボル「シュロスベルク」山上を散策
(画像=<シュロスベルクの階段>、『たびこふれ』より引用)

階段の折り返しスペースで休憩しつつ、眼下の風景を楽しむと、見下ろしていたグラーツの町が少しずつ同じ目線に近づいていきます。

【オーストリア】世界遺産の町グラーツのシンボル「シュロスベルク」山上を散策
(画像=<グラーツ市庁舎>、『たびこふれ』より引用)

この階段を降りて振り返ると、山にトンネルが2つ空いていることに気づきます。左のトンネルは山頂に登るエレベーターに、もう1つはトンネル内のイベントスペースにつながっています。これらのトンネルは、第二次世界大戦中に強制労働者によって作られたもので、グラーツの町が爆撃された際には、司令部の避難場所として使用されていました。シュロスベルク内部には、6.3kmに及ぶ坑道が掘られ、なんと鍾乳洞にもつながっています。