魅力や武器は誰にでも‟必ず”ある
ーー著作『転職は話し方が9割』(スタンダーズ株式会社/税込価格:1,650円)からも感じたことなんですが、ご自身がどう評価していようとも、人には必ず魅力や武器が備わっていると松下さんはお考えですね?
松下:みなさん「自分には何もない」っておっしゃるんですけど、必ずあります。魅力や武器がない前提でいるから、強みを見つけられないんです。
「その業界で働きたい、ここに行きたい」と思った段階で、その資格はあります。ただ、やはり転職においては想いだけではダメなんです。やっぱり即戦力となるかは必ずチェックされます。
少し矛盾しますが、「経験がないとダメなのか」とあきらめないでほしいんです。アナウンサー試験の話ですが、募集要項に経験者のみと書かれていても、提出した資料や履歴書から「可能性がある」と判断されて面接や採用に至る方もいらっしゃるんです。
経験の棚卸しをして、ストーリーを見つけよう
ーー「共感ストーリー」を見つけようとしてもどうしても見つけられない、そんな人はどうしたら良いのでしょう?松下さんはどんなアドバイスをされますか?
松下:意識を変えてみることを、まずはおすすめしています。経験の‟棚卸し”をすることで、ストーリーは必ず見つかります。
たとえばいわゆる事務職、営業部でバックオフィス業務をご経験されているとしましょう。
ご自身は「たいしたことないです」「似た仕事をしている人はたくさんいます」なんておっしゃるかもしれません。でも、私はその経験をしていませんし、「大したことある」経験なんですよ。
なかには「3か月しか経験していない」「1度だけやったことがある」と期間や回数を理由に「未経験と変わらない」とおっしゃる場合もあります。しかし、どんなに期間が短くても、たった1度であっても立派な経験です。未経験の方とはまったく違います。
でも、ウソはだめですよ。「1度ですが経験しています」とはっきりと伝えることが大切です。
話し手も聞き手も、ともに‟心地よく”
ベビーシッターにお子さんを預けながら働いていたという松下さん(2008年頃)
ーー「良い話し方」とはどんなものか、教えてください。
松下:話すときには、必ず相手がいて、ひとりではないんです。自分が心地よく話すことも大事ですが、それ以上に相手も心地よく、一緒に話せるようなものが、良い話し方ですね。広く見渡してお話をする、というのがよい話し方だと考えています。
ーー広く見渡すとは、どんなことでしょうか?
松下:気持ちよく話してもらえるように、とりまく環境にまで気をつけてみる。そんなイメージでしょうか。
たとえばアナウンサーがインタビューをするときに、その相手がとても緊張されていることってよくあるんです。その緊張をほぐしてさしあげることもアナウンサーの仕事のひとつです。
テレビでは言葉だけではなく表情も伝わるので、言い方ひとつで印象が変わってしまうこともあります。