とても失礼な行為

 自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏はいう。

「モスフードは今回の騒動の謝罪コメントで『本部は指示していない』としていますが、たしかにそうだと思います。もし本部が指示を出していれば、モスバーガーの各店舗で一斉に同じ動きが見られます。また、貼られているポスターが原因で多くのお客さんからクレームがあり、企業イメージがマイナスになると本部が判断したら、ポスター撤去という指示を出すことでしょう。店舗管理・マネジメントが徹底されていると思われる大手外食チェーンにおいても、今回のような各店舗の独走はありえます。バイトテロを思い出してみてください。スタッフや店長も人間です。指令をインプットされたロボットではありませんから、本部がいくら啓蒙・啓発活動、教育をしても勝手な判断や行動でお客さんや本部に迷惑をかけてしまうことは避けられません。

 そして、今回は店長や現場スタッフの感性と判断により、タレントの顔を隠す意図で『テイクアウト お持ち帰りいただけます』『テイクアウト用スプーン・フォークがご不要なお客さまはお申し付けください』と書かれた紙を貼っていますが、世の中の感性とはズレていたようです。張り紙に書かれた内容よりも、顔の上に張り紙があるという事実に注目が集まります。そして『人の顔を隠す』のは、何か悪いことをしたという理由や、人物の特定を防ぐという理由で行うものです。ジャニーズは事務所としては問題を起こしましたが、タレントが問題を起こしたわけではありません。そのような状況において顔を隠す張り紙を張るというのは、とても失礼な行為であり、お客さんから常識を疑われてもおかしくはありません」

 外食チェーン各社は有名タレントをCM・広告に起用しており、その出演料はときに数千万円レベルの高額に上るとみられるが、特に商品単価が数百円のファストフードチェーンにおいて、高額な出演料に見合うほどの売上増など業績面での効果はあるものなのか。

「通常、大きな企業になるほど売上アップやイメージアップを狙うためにタレントを起用します。実際にいくら売上アップに貢献したか明確には見えない部分もありますが、企画ごとに年間の広告費の予算枠があり、そのなかで何をするか、訴えかけるターゲット層やスケジュールをどうするのかが決定されます。ちなみに小さな飲食店の場合は、予算枠という概念がなく、スケジュール組みをしていないところがほとんどですが、広告費は平均するとネット広告を中心に年間で売上の1~3%くらいになっているのではないでしょうか。それに対して大手となると3~7%くらいになりますが、企業ごとに結構幅があります。

 何もしないと競合他社や店舗、商品においていかれます。広告には新規顧客の誘導効果だけでなく、既存顧客の呼び戻し効果もありますから、絶えず広告を使って何かしらの情報発信や提案を行わなくてはなりません。そんな大事な広告の場で企業がマイナスのイメージを生んでしまったという点で、残念な出来事だったと思います」(同)

(協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表、江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)

●江間正和/東京未来倶楽部(株)代表
東京未来倶楽部(株)代表
5年間大手信託銀行のファンドマネージャーとして勤務後、1998年独立。14年間、夜は直営店(新宿20坪30席)ダイニングバーの現場に出続けながら、昼間、プロデューサー・コンサル業。コンサル先の増加と好業績先の次の展開のため、2012年5月からプロデューサー・コンサル業に専念。
「数字(経営者側)と現場(スタッフ・オペレーション)の融合」「各種アイデア・提案」が得意。また、現場とのメニュー開発等、自称<「実践」料理研究家>。
・著書:『ランチは儲からない、飲み放題は儲かる』『とりあえず生!が儲かるワケ』『ド素人OLが飲食店を開業しちゃダメですか?』

提供元・Business Journal

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