ファミマとの協業で広告の幅と精度が向上する
リテールメディア事業においてファミマと協業することにより何ができるようになるのか。この点についてPPIHの広報室に聞いた。
「これまではmajicaアプリ(編注:国内ドン・キホーテ及びmajica加盟店で使用できる電子マネー)もしくは店内サイネージなどPPIHの『オウンドメディア』を活用した広告配信サービスの展開を行っていましたが、今回のファミマとの協業により広告配信に活用できる購買履歴を持った広告ID数が圧倒的に増え、広告配信の面を外部メディア(例:SNS)に拡大することができました。ドン・キホーテはZ世代のお客様が多く、Z世代の情報源は圧倒的にSNSからになりますので、SNS上に購買履歴を活用したターゲティング精度の高い広告を配信できるようになったことで、『オンライン~オフライン(店頭)一気通貫』でZ世代に訴求できる広告をメーカー様に出稿していただけるようになりました。
また、消費者は日々の生活の中で『曜日』や『買う内容』などで、コンビニとディスカウントストアを使い分けてお買い物をされていると思いますが、今回の提携により、消費者の購買行動が、ファミリーマートとドン・キホーテ横断で見ることができるようになったため、たとえばドン・キホーテでは買わないが、ファミマでは毎日ビールを買っている、といった方にもビール新商品の広告を配信することができるようになり、広告対象商品の売上アップにつながる、メーカー様にもドン・キホーテにもメリットのある広告サービスが展開できています」
ファミマは約2,900万人の広告IDを有する一方、PPIHは約1,100万人の「majica」アプリ会員を有しており、今回の協業によって3千数百万超の広告IDを共有できるようになるようだ。
とはいえ、利用目的が異なるコンビニとドンキでデータを共有しても効果は少ないのではないか。
「おっしゃるとおり、それぞれのお店を利用する理由が異なると思います。だからこそ、データ連携に意味があると考えております。たとえばコンビニでは展開できるSKU(編注:Stock Keeping Unit/在庫管理単位)数が限られているため、全種類のフレーバーを展開できない商品が多いと思います。また定番ではないフレーバーは一定期間を過ぎたら店頭からなくなってしまう。一方ドン・キホーテでは全種類を取り揃えることができる。なので、コンビニでいつも同じ味を購入されているお客様に『このメーカーの商品には、こんな味もありますよ』という情報をお伝えしたり、毎回リピート購入されているお客様には、ドン・キホーテではよりお得な『箱買い』ができますよ、といったような情報をお伝えすることができます。そのように、小売のチャネルをまたいで見えるお客様の趣味嗜好を元に『その情報知りたかった!』というような気づきのある情報提供につながる広告配信を担うことで、消費者にとっても、広告主であるメーカー様にとっても、ドン・キホーテにとっても価値がある広告配信になると思っています」(PPIH広報室)
スナック菓子を例に挙げよう。ドン・キホーテでは全種類を提供しているもののファミマでは一部のフレーバーしか販売できない。この際、ファミマでA味のスナック菓子ばかりを買う消費者がいた場合、「ドン・キホーテではB味も売っていますよ」「ドン・キホーテでは箱買いできますよ」といった広告が打てるようになるという。つまりリテールメディア事業での協業によって、PPIHとファミマの両者が今までよりも多くの層により精度の優れた広告を打てるようになるのだ。
ちなみに、顧客購買行動のデータ利用に関しては、過去にJR東日本がSuicaデータを外部に提供しようとして炎上したことがある。
「個人情報の取得と利用に関しては、従前より、アプリの利用規約やプライバシーポリシーなどで事前に同意を取得し、その範囲内で適切に利用しております。また、オプトアウト導線も整備するなど、個人情報保護法に抵触しないことはもちろん、引き続き消費者に十分配慮した形で事業運営を行ってまいります」(同)