路面を問わずしなやかな乗り心地。ハンドリングにも優れたオールラウンダー
全長×全幅×全高4480×1800×1580mm(ルーフレール装着車)とサイズは手ごろ。室内空間はルーミー。後席や荷室のユーティリティは十分に確保されている。乗り降りしやすいよう配慮されていることも使ってみるとわかる。
走りは好印象。今回のチェックに加え、これまでクローズドコースや郊外のワインディングロードも走っているが、一貫してプラスの思いを抱いている。日常ユースはもちろん、ロングドライブからカントリーサイドへのちょっとした「冒険」まで、信頼できる相棒として十分なポテンシャルを備えている。
高めの地上高と大径タイヤは走りにも効いている。ストローク感のある足回りはしなやかに路面を捉え、凹凸や継ぎ目を乗り越えても衝撃は小さい。クロスオーバーとして1〜2位を争う快適な乗り心地の持ち主である。これには体をしっかりホールドし、頭がブレにくい構造を採用したシートも効いているようだ。
後席も居心地がいい。このクラスは前席重視で後席はそれなりというクルマが多い。だがクロストレックはスペース性だけでなく、シートの作り、乗り味、静粛性を含め前席との差が少ない。


ハンドリングは正確である。直進安定性は高く、ステアリングは切り始めたから遅れなく応答。イメージしたラインをそのままトレースする。修正舵は少なくて済む。優れた操縦性は、このクラスの日本車で採用例が増え始めた2ピニオン式の電動パワーステが効いている。しっかりとした手応えとスッキリとしたフィーリングを両立した点が素晴らしい。レヴォーグやWRXも2ピニオン式を採用しているが、それよりも感触に優れる。
クロストレックの走りのよさは、土台となるプラットフォームがしっかりしているからこそ。軽量で剛性の高い第2世代となるSGPの実力の高さに改めて感心した。


一方で2リッター水平対向4気筒(145ps/188Nm)とモーター(13.6ps/65Nm)を組み合わせたe-BOXER(FB20)は、クセがなく扱いやすいが、よくも悪くも薄味である。
新型のパワートレーンは大改良が施され、従来、見受けられた応答遅れや段付き感が解消。リニアなレスポンスとフラットなトルク特性を実現している。音や振動が小さい水平対向の強みに磨きがかかり、スムーズで静かにもなっている。
モータースペックからも判断できるように、あくまでマイルドハイブリッドである。電動車感は少ない。発進時や再加速時に頻繁にモーターがアシストするが、その実感は薄い。パフォーマンス自体に大きな不満はないにせよ、もう少し電動感なりパワー感なりプラスαを期待したくなる。
定評のある安全性については、新たに広角単眼カメラをプラスし、アイサイトの機能を充実させた。全体としてクロストレックは完成度の高さが印象的。手ごろな価格とサイズで使い勝手に優れ、見た目も走りの満足度も高い。幅広い層に愛されそうだ。
通知表/SUBARUクロストレック・リミテッド(4WD) 価格/328万9000円

総合評価/74点
Final Comment
スバルらしい真面目さと作り込みが光る
中でも快適な乗り心地はクラストップ級
パワートレーンに物足りなさを感じた。燃費テストの結果も平凡。だが、クルマ全体としては確実に進化し完成度が高い。とくに乗り心地を含めシャシー性能には感心した。視界のよさに加え、室内のすみずみまで使いやすさに気配りされている点はスバルの良心が息づいている。新世代アイサイトは機能面では充実したものの、車線維持が心なしかおぼつかなくなっていたり介入感が強まっていた点が気になった。この点は長距離をドライブして、改めて検証したいと思う。




