アスタミューゼ株式会社は、次世代移動通信(5G・6G)の技術領域において、同社の所有するイノベーションデータベース(論文・特許・スタートアップ・グラントなどのイノベーション・研究開発情報)を網羅的に分析し、動向をレポートとしてまとめました。

5G・6Gに関連する特許出願について、国別動向や、5G・6Gの用途として注目されている領域を分析し、今後のモバイル通信技術の発展をより明確に見通すためのレポートとなっています。

高速・低遅延の5G、さらに進化する6G

現在利用されている5Gのサービスは、「高速・低遅延」が特徴です。

そして、2030年ごろに実用化が予想される6Gでは、さらなる高速・低遅延はもちろん、自然、遠隔地域、宇宙にまで電波の届く範囲が広がる「超カバレッジ拡張」や、1平方キロメートルあたり約1,000万台を同時接続できる「超多数同時接続」が可能になるとされています。

特許出願の国別動向、2012年までは日本がトップ

図1:5G/6Gモバイル通信に関連する特許出願件数の遷移(2001年~2021年)

図1は、5G・6Gモバイル通信に関連する特許出願の国別動向です。

2001年以降に約50,000件の特許が出願されており、特許出願件数が1位の韓国、2位の中国、3位のアメリカは、2014年から2016年にかけて急激な成長をとげました。

図2:5G/6Gモバイル通信に関連する特許出願件数の遷移(2001年~2021年/上限100に固定)

図2は、2013年以前の動向をわかりやすくするため、出願件数を縦軸100件までに限定して表示したものです。

日本は2012年までは世界でもっとも多くの特許を出願していましたが、その後は韓国・中国・アメリカに追い抜かれていったことがわかります。

特許の「価値」を評価し、各国や出願者の総合力を算出

アスタミューゼ株式会社は、独自の特許価値評価ロジックを用いて、各特許の価値を示すパテントインパクトスコアを計算し、帰属国や出願者(企業・研究機関)ごとにトータルパテントアセットを算出しました。

トータルパテントアセットは出願件数に特許の「価値」を加えることで、各国や出願者の特許の総合的な力を俯瞰する指標となります。

図3:出願特許の帰属国別のトータルパテントアセットのランキング

図3は、2001年から2022年にかけて全世界で出願された特許における、帰属国別のトータルパテントアセットのランキング。出願件数では中国と韓国が競っていますが、スコアを考慮すると、中国の出願特許がより高く評価されていることがわかります。

日本企業から出願され、もっとも高く評価された特許は、2017年に出願されたソニー株式会社の「US11357059B2 Distributed control in wireless systems(ワイヤレス環境における分散制御技術)」でした。

この技術で、複数の送受信ポイントによる多重接続のアクセス制御機能を複製することで、5Gを活用したワイヤレス環境における分散制御を実現しています。